そしてこのプレゼントは、その侘びだと言う。流石に、そのように言われたら受け取らないわけにはいけない。マナはオドオドとした態度を見せつつ頷くと、受け取るという意思を示した。
「それでしたら……」
「そう、良かった」
「その……値段は?」
「高くはないよ。僕が購入する予定の本の方が、高かったりする。だから、金欠になってしまう」
溜息をつきつつそのように言うエイルに、マナはクスっと笑ってしまう。伯爵家の次男といっても、金銭感覚は庶民と一緒。意外な共通点に、マナは嬉しさを覚えた。やはり、エイルは一般の金持ちとは違う。何故、メイド達が騒ぐのか。マナは、徐々にその意味を理解していった。
だが――
やはり、現実は厳しかった。
その後、二時間半エイルは書店に篭っていたという。勿論、その間マナは静かに待っていた。途中、エイルの横に立ち立ち読みに参加していたが暇という感情は隠し切れない。その為、書店の隅の床に座り書店を利用している客の観察をしながら、時間を潰していった。
帰宅したのは――
太陽が、山に掛かる時間帯だった。
◇◆◇◆◇◆
仕事を一通り終えたマナは、自身が使用している部屋に置かれている寝台の上に腰掛けていた。時刻は、深夜を回っている。彼女は住み込みで働いているということで、他のメイド達とは違い遅い時間帯まで仕事をしていた。結果、就寝は毎回この時間になってしまう。
しかし、苦労はしていない。きちんと寝床が用意されていて、尚且つ仕事場の仲間は優しい。
エイルの世話係になったということで仲間達から愚痴を言われたりもしたが、相手は嫌味で言っているわけではない。これは一種のコミュニケーションで、それを知っているのでマナは笑っていられた。
そして、今日という日は――今までの人生の中で、大きな転換期を迎えていって過言ではない。エイルという人物に出会ったことにより、確実にマナの人生に大きく影響を及ぼしていた。当初は貴族の息子ということで構えていたが、今はかなり印象が変わってきている。


