ロスト・クロニクル~前編~


「苦痛かな」

「えっ!?」

「悪い意味で、言っているわけじゃないよ。ただ、時々……時々、大変だと思う時があるんだ。だから、気分転換をしたいと思って。今日の買い物は、半分はそのいう意味があるよ」

「そうでしたか」

「だから、頼みごとが……」

「何でしょうか?」

 しかしそのことを口にするのが気恥ずかしいのか、エイルは言葉を口にするのを躊躇う。だが、マナはエイルの言葉を待っている。その為、意を決し自身が思っていることを発した。

「いいかな?」

「宜しいのですか?」

「頼み易い」

「そ、そうですが……」

 エイルの言葉に、マナは赤面してしまう。彼の頼みごと――それは、定期的の買い物に一緒について来てほしいというものだった。唐突の内容に、マナは瞬時に了承することはできない。それどころか、本当に自分でいいのか迷ってしまう。それにより、逆に質問を返していた。

「駄目?」

「その……他のメイド達では、いけないのでしょうか。私より、もっと真面目なメイドはいます」

「だから、頼み易い。それに、荷物を持ってくれる人物がいると有難い。そういう理由なんだ」

 他のメイド達より、大人しく物静かで一緒にいると楽。そのような理由から、エイルは「一緒に――」と、頼んだ。それ以外、深い理由は存在していないという。その発言にマナは赤面から一変、複雑な表情を浮かべてしまう。しかし相手が相手なので、下手に断ることはできなかった。

「有難う。やはり、頼み易い」

「い、いえ……」

「お礼で、それを贈るよ」

「で、ですが……」

 確かに、恋愛小説に興味を持っているということを言った。だからといって、それをプレゼントさせるとは思いもしなかった。反射的にマナは頭を振るうと、貰うわけにはいけないと告げるが、エイルはそれを許さない。どうやら、荷物持ちをさせてしまうのが申し訳ないようだ。