それは――
恋愛は二の次。
「エイル様には、彼女は……」
「いないよ」
「人気があると、思いました」
「そうかな?」
「メイド達の間では、人気です。それに、多くの者達が……その……いい意見が、多かったりします」
「買い被りすぎ」
このように評価を下されると、苦笑いしか出ない。どの部分を見て、メイド達は褒めているのか。確かに今まで道を反れたことはないが、それは当然のことであってエイルは偉いと思っていない。逆にそれが「普通」と思っており、メイド達の言葉が苦痛として圧し掛かる。
一方、メルダースでは――
エイルは気付いていないが、彼の人気は予想以上に高い。友人が多く、いつも多くの生徒達が周囲に集まってきている。勿論、中に「エイルと付き合いたい」と、思っている生徒がいるというが、そのことも気付いていない。やはり、彼は本の虫。恋愛は、頭の中になかった。
「ですが……」
「そうだね。嬉しいよ」
「その……頑張って下さい」
「どうしたの? いきなり」
「メルダースの勉強もそうですが、親衛隊の試験もありますので。エイル様は、本当に凄いです」
「有難う」
「私は、真似できません」
「まあ、これは仕方ないから」
別世界で暮らしている者へ贈ることができる物といえば、このような簡単な言葉のみ。しかし、エイルは嬉しかった。これは、裏表が無い気持ちが込められた言葉であったからだ。
その時、エイルはひとつの特徴に興味を抱いた。マナは――そう、彼女は普通の女性と何処か違っていた。
雰囲気と立ち振る舞い。その両方は、明らかにバゼラード家で働いているメイド達とは、異なっていた。大人しいという言葉で表現も可能であったが、メルダースの中にも大人しい女性はいる。その人物とは、明らかに違っていた。第一に付き合い易く、何でも言える相手。


