ただ、今は静かに見守る。そして初恋はいつになるのかは、本人の生き方と立場が左右していた。今は、それが重要な部分を占めてはいない。今は今で、エイルにはやることが存在していたからだ。
「で、終わり」
「すみません」
「いや、今回のことは仕方がないよ。それに結婚式の時の女性って、迫力が違うね。驚いたよ」
「婚儀は、女にとって……」
「そういうもの?」
「はい」
好いた相手と、一生添い遂げる。それは女であったとしたら誰もが望むことであり、マナもそれを望んでいた。メイドとして生活しているが、願えば好いた相手と結婚をすることも可能だ。
現にメイドであったとしても、結婚をしている者は多い。それは、同僚のことを指す。それを間近に見ていたマナは、結婚に対しての憧れというものは強く持っていた。しかし、特定の誰かを――というのはいない。仕事が忙しいというのが関係し、恋愛をしている暇がない。それに今はエイルの世話をリンダから言い渡されているので、それを優先しないといけなかった。
「幸せになるといいね」
「それは?」
「マナだよ」
「わ、私ですか!」
「いけない?」
「いけなくは……ないです」
エイルの言葉に、どうすればいいか迷ってしまう。異性にこのように言われたのは、はじめてなので、徐々に頬が赤く染まっていき羞恥心のあまり俯いてしまう。そして、言葉が続かなかった。
「どうした?」
「いえ、何も……」
今抱いている感情を押し隠したいマナは、エイルに早く書店に行きたいと提案する。無論、勝手に提案していいものではないが、高ぶった感情を抑えるにはこれしか方法がなかった。
それに対しエイルは、特に反論しない。彼自身も、早く本を買いに行きたいと思っていたからだ。エイルの本来の目的は「書店で、本を購入する」であったが、事故が発生してしまい大幅に予定が狂ってしまう。だが、また高い位置に太陽は昇っているので、特に心配することはない。


