出会いは、偶然――
それは、とてもいいものだった。
何より、今までの生活と違う。マナは胸元を握り締めると、湧き上がってくる感情を抑え付けていく。
人間は、一体何を幸せに思うのか。
マナは、エイルとの出会いが幸せだった。
メイドの仕事は忙しいが、楽しい毎日を送っている。そして今日から、更に充実していく。頑張って世話係を務めないといけない。必然的に力が入っていき、マナは自分自身に気合を入れる。そのような思いを巡らせていると、エイルが汚れたハンカチと手を洗っていることに気付く。
慌てて自分が洗濯をすると申し出るが、それに対しエイルは丁重に断る。その手付きは「手馴れている」という言葉が似合っていたが、どうして伯爵の称号を持っている一族の子供が、洗濯に手馴れているのか。別にバゼラード家の内情は、逼迫しているわけではない。
疑問に思ったことを質問していいのか、一瞬躊躇いが生まれてしまう。しかし相手は優しい人物なので、このような質問をしても怒ったりはしないだろうと判断したマナは、質問をぶつけていた。
「エイル様は、伯爵様のご子息ですから……」
「それくらい、自分でやらないといけないから。確かに、専門的に頼んでしまう生徒もいるけど」
「その方って、一体?」
「商家の息子。噂では、それなりに儲かっているらしい。だから、結構目立ったりしているよ」
「お金持ちが、多いのでしょうか?」
「メルダース?」
「はい」
一般的にメルダースは、貧富の差に関係なくどのような人物も受け入れる。要は、学力と実力重視の学園だ。それを知らない者は、メルダースは金持ちが通う学校と勘違いしてしまう。
確かに、実家が金持ちという生徒はいる。しかし、生徒の大半は普通の家庭の人間だ。いい例が、ラルフの家庭。彼の両親は故郷で農業を行っているので、収入が高いわけではない。
そのような家庭の人間がメルダースで学んでいるというのだから、収入に関係なく入学できるというのが証明されている。また、金を使っての裏口入学は絶対に許されない。不正行為は学園長クリスティが最も嫌い、過去に不正を行った人物が、とんでもない目に遭った。


