しかしラルフは側にいないので、自分で切り抜けないといけない。だが言葉が上手く続かず、全身が硬直してしまう。そして必死に次の言葉を探していくが、経験の無いエイルにはテスト以上に難解だった。何より「これだ」という明確な回答が、存在していないからだ。
「説明していい?」
「……はい」
懸命に導き出した回答は、魔法の説明をしていいかどうか。恋愛を熟知しているラルフが聞いたら爆笑が返ってくるに違いないが、エイルはこれでいっぱいいっぱい。それでも、マナに気持ちは伝わっている。いつの間にか涙は止まり、口の端を緩めていた。そして、真剣な目付きで説明を聞き入る。
「僕が使おうとしているのは、回復魔法なんだ。魔法に二種類存在していて、それは攻撃と回復で攻撃は……それは、今はいいか。回復魔法は、主に傷を治したり薬の補助をする力といっていいかな」
「補助?」
「その説明をすると長くなってしまうから、いずれ説明してあげるよ。で、呪文を唱えて魔法を使うから」
「わ、わかりました」
「で、重要なことが――」
途中で言葉を止めると、エイルはポケットから取り出したハンカチでマナの掌に広がる血を拭いていく。勿論、説明の最中も血は流れ出ている。やはり、傷は想像以上に深い。こうなると、長々と説明はできない。エイルは早口で残りの説明を済ませると、マナに再度いいか尋ねた。
「エイル様を信じます」
「そう言われますと、緊張するよ」
「でも、信じます」
「が、頑張るよ」
エイルが回復魔法を使用したのは、過去に数回しかない。それも、相手は簡単に壊れないラルフ。面白半分で使っていたので、真剣に使用するのは今回がはじめて。きちんと集中しないといけないのだが、緊張してしまい上手く集中できない。何より、マナの視線が全身に突き刺さる。
「横、向いて」
「は、はい」
視線が気になるというのなら、横を向いてもらえばいい。これで少しは違うが、エイルの額には脂汗が滲み出ていた。何度も呼吸を繰り返し呼吸を整えると、徐々に意識を集中していった。攻撃魔法同様、回復魔法も意識の集中は重要で、エイルは微かに唇を動かすと呪文を唱えだす。


