しかし両手を摺り合わし綺麗にするということ、マナに苦痛を与えてしまうのでそれはできない。それならとエイルはマナの手を取ると、代わりに指先を使い丁寧に泥を落としていく。無論、このようにすることを伝えていないので、マナの顔は真っ赤になってしまう。
じっとしているとわかる、頬の熱。顔全体から湯気が立ち上っているのではないかと思ってしまうほど、熱い。先程のスカートの件といい、短い時間の内に二回も赤面してしまう。
掌から伝わるのは相手の体温に、マナの心臓を締め付けていく。生まれてはじめて、異性に手を握られた。それだけで、感情が高ぶってしまう。マナはこのようなことに関しての免疫は、全くといっていいほど持ち合わせていない。頭の中は真っ白で、思考が半分止まってしまう。
大丈夫と言うべきか。
それとも、このまま――
半分止まっている思考では、答えを導き出せない。
このまま時間だけが過ぎていく。
その時、エイルの動きが止まった。綺麗にした掌を見詰めつつ、溜息をつき渋い表情を浮かべていた。
「ああ、御免」
「どうしました?」
「傷、深かった」
「い、いえ。そのようなことは……」
「医者……いや、魔法で治そう」
「ま、魔法?」
「いいかな?」
魔法という力が、この世界に存在している。そのことを知っているマナであったが、実際に目にするとは思いもしなかった。怖いという思いと、好奇心が混じり合う。しかし、相手はエイルなので、過度の心配は相手に失礼に当たる。マナは恐る恐る頷くと、意思を伝えた。
「失敗するかも」
「でも、エイル様は――」
「僕の専攻は、攻撃魔法だから。それに回復魔法は、趣味で学んでいることだから……頑張るよ」
衝撃的な真実に、互いの間に微妙な空気が漂う。だが、今更「嫌です」ということは言えない。それに、マナはエイルを信じようと思っていた。失敗したら失敗したでいいと思うマナだが、彼女は知らない。魔法の失敗の反動が、いかなるものなのかを。だからこそ、普通に構えている。


