何故、女性が熱くなるのか――
その理由は、それを手に入れると「幸福を得て、次の花嫁候補」という謂れが存在しているからだ。
その為、女性は血眼で動く。この中に、男性が立ち入る統べは無い。それならマナが加わればいいが、彼女は頭を振る。式の関係者ではない者が、それに参加してはいけないと思っているらしい。
だが、輪の中には明らかに関係者以外の人物が参加している。それは、彼女達の服装から判断できた。結婚式に参加している者は、一般の服装とは異なり煌びやか。だがそれ以外は、街娘の地味な服。そしてその中には、メイドの服装をしている女性が数人混じっていた。
「で、ですが……」
「僕は、構わないよ」
「……それでしたら」
「待っている」
「有難う……ございます」
最初はオドオドとした態度を見せていたが、エイルの言葉に嬉しそうに口許を緩めた。やはり、マナも女の子。興味が無いように振舞っていても、心の中は異なる。それを証明するのが、マナの態度。足早に輪の中に加わると、早く早くと待つ。その表情は、明るいものがあった。
数分後、純白のドレスを纏った花嫁が神殿の中から姿を現した。その瞬間、女性達が黄色い悲鳴を発した。そして一斉に、花嫁のもとへ集まる。それにより、更に熱気が上がっていった。
結婚式とは、一体何か――
その光景を見たエイルは、言葉を失う。
しかしそれ以上に驚いたのが、マナの姿。完全に、周囲に負けてしまっている。押すな押すなの大騒ぎ。人の流れに逆らう勇気を持っていない彼女に、それに打ち勝つのは厳しい。
その為、輪の中心から弾き出されてしまった。だが、不運はそれで終わらない。体格のいい女性が、体当たりしてきたのだ。華奢なマナにこの攻撃は強烈であったらしく、地面に倒れてしまう。
「マナ!」
「だ、大丈夫です」
突然の事件発生に、エイルは目を丸くしてしまう。慌ててマナの側へ向かうと、痛い箇所がないか尋ねる。幸い酷い怪我は負っていないが、掌を擦り剥いてしまっている。それに、血が滲み出ていた。流石にこのままにしておくわけにはいかず、細菌が入ったら傷口が化膿してしまう。


