周囲は相手にしていた。それにラルフの声音は、一種の名物。学園に響き渡らないと、寂しい。
ふと、脳裏にラルフの顔が過ぎった。
何故、今頃――
懐かしい友人に、エイルは苦笑してしまう。
「エ、エイル様」
「何?」
「怒っていますか?」
「いや、怒ってはいないよ。メルダース時代のことを思い出して……この話に付いては、後で……」
この場の居心地は、悪かった。それは周囲の者達の視線が、いまだに一点に集中していたからだ。
悪口は徐々に小さくなってきているが、気分がいいものではない。無論、マナも一緒だった。それに早く「神殿に行く」という約束事を遂行しないといけないので、二人は足早に立ち去った。
神殿に向かう二人の耳に、鐘の音が届いた。
規則正しい音は、青空に吸い込まれて行く。
今は、鐘が鳴る時刻ではない。
なら――
この音に、マナは立ち止まってしまう。
「どうした?」
「そ、その……」
「ああ、結婚式か」
「す、すみません」
「いや、いいよ」
エイルはその言葉に続き、一定の方向を指で指し示す。其処には、数多くの女性が群がっていた。彼女達の目は血走っており、何かを待っている様子だ。それに、殺気が漂っている。
これは、一種の壁か――
彼女達の迫力に、マナは動揺してしまう。
何故、これほど熱気に包まれているのか。エイルは瞬時に、その意味を理解する。結婚式の終了後、花嫁から贈り物がある。それを彼女達は、待っていたのだ。しかしそれはひとつしかないので、殺気と熱気が入り混じっている。こうなると、誰かが亡くなる可能性が高い。


