高い財力は、貧富の差を一定に保つ。それにより国民は、安定した生活を送ることができた。
莫大な財力は、嫉妬を買う。
結果――
その時、エイルの足が止まった。それは、周囲に顔見知りの人物がいたからというわけではない。ただ故郷を懐かしく思ったと同時に、嫌な思い出が生じてしまった。そう、この国の在るべき姿。
「ひとつ、聞いていいかな」
「ど、どうぞ」
「この国の内情を教えてほしい」
「ですが、エイル様は……」
「確かに、クローディアは僕の故郷。しかし四年の間、一度も帰郷はしていない。だから、何も……」
「……同じです」
「そう……か」
短い回答に、エイルの顔が曇った。四年前と、変わっていない現状。いや、この短期間で変化する方がおかしい。現状維持――逆に、その点を喜ぶべきか。しかし、不安要素は多い。
「エイル様、私は……」
「それは、無理だよ。僕達は、何もできない」
「ですが……可哀想です」
「可哀想?」
エイルが考えていた内容と、マナが思っていた内容とは明らかに異なっていた。可哀想は、何を示しているのか。この国か、特定の人物か。エイルは、首を傾げてしまう。そして、尋ねた。
「女王様です」
「王位を継承した」
「それは……」
「女神は、まだ……」
12歳の姫君シェラが、女王の座に就いている。その話はリデルから聞かされていたが、俄かに信じられなかった。別に、信頼していないわけではない。王位の継承は、簡単にできるものではなかったからだ。
シェラが女王に就いていたという点は、事実だ。そして王位継承には、この国が信仰している女神エメリスの意思が大きく関係している。それに、神官達が立ち会わないといけない。その両者が存在したとは、エイルの耳に入っていない。それに両親もイルーズも、口にしていない。


