突然の悲鳴にリンダは、何事が起こったのかと廊下の様子を窺いに行く。すると、マナのオドオドとした姿が視界に飛び込んでくる。それにより状況を瞬時に理解し、リンダは一喝した。
「申し訳、ありません」
「日頃より、貴女の行動は――」
「リンダ、話の続きをしよう」
「そ、そうですが……」
説教が開始する寸前で、エイルの言葉が制する。あのまま何もしなければ、リンダはエイルの目の前で説教を開始していた。無論、立ち会うに相応しいものではない。それにリンダの説教は長いことで有名で、その長さはメルダースのジグレッドに及ばないがかなりの時間を食う。
「で、いいかな」
「買い物なら、仕方がありません」
「有難う。さて、行こうか」
「はい」
マナはエイルからの誘いに返事に返すと、リンダが立っている方向に視線を向け、深々と頭を垂れる。この場合エイルの方が立場は上であったが、リンダの方が性格的に怖かったので、彼女に敬服の意思を表した。それにエイルは、リンダのように厳しい性格ではない。
「その気持ちが、大切です。貴女は――」
「……リンダ」
「し、失礼しました」
「リンダは真面目だから、仕方がないからね」
「それが、私の役割です」
「うん。それは、わかっている」
メイドとして働く者の身分は高い方ではないので、リンダが彼女達の教育に当たらないといけなかった。目上の人物に対しての立ち振る舞いと、言葉遣い。それに、一般常識。この屋敷の当主は伯爵の称号を有しているので、粗相があってはいけない。何より、失礼に当たる。
彼女の教育は厳しいので、勉強が嫌いな者にとっては辛い作業。それにリンダの授業には、私語は不必要。そのような関係からリンダはメイド達から恐れられているが、決して嫌われているのではない。
愛しているからこそ厳しく言うように、メイド達も本当に嫌っているのなら言うことを聞いていない。しかし、メイド達はリンダの命令に従っている。その証拠に、ギクシャクした関係を築いていない。特にマナはリンダのことを慕っており、母親のように思っている。


