それ以前に、フランソワーは生徒達の間で有名であった。
毎回毎回、檻から抜け出しては学園の中を散歩している。
これで目立たないというのが、無理である。
その結果フランソワーというオオトカゲは一躍有名となってしまい、処分の対象となってしまったがいまだに生きている。
「お前の飼い主が捜しているぞ」
しかし、言葉が通じることはなかった。
フランソワーはフンと鼻息を荒くすると、再び本棚を齧りはじめる。
それの何が面白いのか、ガリガリと本棚を齧るフランソワーの姿は何処か不思議なものがあった。
その時、ギシギシと何かが軋みだす。
怪しい音にエイルは反射的にフランソワーが齧っている本棚の角を見ると、とんでもない物を目撃してしまう。
齧られた影響で角が窪み、おかしな形に歪んでいた。
それもいつ壊れてもおかしくない状況にあり、身の危険を感じる。
刹那「バキ」と木が折れる音と共に、フランソワーが頭上から振ってきた。
エイルは急いでその場から逃げたことによりフランソワーの下敷きにならないで済んだが、彼女に災難が訪れてしまう。
何と、背中から落ちてしまった。
だが、頭から落ちなかったのが不幸中の幸い。
全身に走る痛みによって暫くは動けない状況にあったが、痛みが引いた途端暴れだす。
その姿は、哀れとしか言いようがない。
そして彼女は今、短い手足をバタつかせ、懸命に起き上がろうとしている。
起き上がれないことが悲しいのか、哀愁たっぷりの声で鳴く。
そして視線でエイルに起こしてほしいと、訴え掛けてくる。
何処でこのような高等技を覚えたのかわからないが、飼い主がラルフなので詳しい詮索は無用。
全ては「ラルフのペットだから」で、片付けられる。
「お前の曲芸は凄いよ」
オオトカゲとは思えない行動に、エイルは仕方なく起こしてやることにした。
それに可哀想という、同情心が多少存在している。
飼い主がラルフだろうと、フランソワーは関係ない。
それに母親になる身なので、身体を第一に考えてあげないといけない。
エイルは重い身体を横から押すが、何を思ったのかフランソワーがエイルを蹴り出した。
その瞬間、エイルの周囲に黒い何かが漂った。
「ほう、恩を仇で返すか」
蹴られた箇所を擦りつつ殺気が篭った圧力を掛けていくが、飼い主のラルフ同様にフランソワーも感覚が鈍いらしく、エイルの殺気に全く気付いていない。
それどころか周囲を見回し、何かを探しはじめた。
どうやらラルフが与えている飯が足りなく、腹が減っているらしい。


