親衛隊の試験に合格した場合、次はメルダースの卒業を真剣に考えないといけない。入隊が決まっているというのに卒業ができなかったとなってしまったら、これ以上恥ずかしいものはない。また、バゼラードの名前に関わってくる。名門一族は華やかな一面を有するが、同時に複数の視線が向けられる。
マナはエイルの世話係りとしてリンダから命令を受けているので、勿論断る理由はないのだが、彼女は戸惑いを覚えてしまう。メイドとしての仕事は完璧に行うことはできるが、誰かの付き添いをしたことはない。正直、今回がはじめてなので、迷惑を掛けてしまうという思いが先に立つ。
「私で、宜しいのでしょうか」
「迷惑?」
「いえ、そのようなことは……」
「それなら、頼むよ」
「あの……何処へ行くのでしょうか。このような質問をしてしまい……本当に、すみません」
「いや、そのようなことはないよ。本屋に行こうと、思っている。勉強は、真面目にしないといけないし」
「メルダースは、それほど……」
この学園の名前を知らない人物は、この世界に存在しない。そのように表現できるほど、この学び舎は有名であった。入学試験は世界一難しく、同様に進級と卒業も難関であった。そのような場所で、知識を得ているエイル。自身との違いに、マナは溜息を漏らしてしまう。
クローディアの国民は、大半が読み書きを普通に行うことができる。それは「庶民も最低限の勉学を――」という計らいが関係しているが、それ以上の知識を有したい場合は、学園に入学するか独学しかない。そしてメルダースに入学するということは、夢のまた夢だ。
「留年が当たり前の学園だけど、僕はそれを行うことはできないからね。だから、実家に帰ってきてもゆっくりはできない。このようにしている間も、学園では授業が進められているし」
「でも、ご無理は……」
「有難う。でも、これは仕方がないことだよ。僕が、親衛隊の試験を受けないといけないから」
長男がそれを行うには不適合と判断が下された場合、次男がその役割を担わなければいけない。エイルは、弱音と愚痴を言うことは滅多にない。内に秘めてしまうことが多く、表情では判断できない。この場合、言葉は不要であり、適当なことは言ってはいけない。マナはそのように判断したのか、口をつむぐ。それにマナはエイルではないので、心の中はわからない。


