それは鋭い指摘ではなかったが、マナはそれを真剣に受け止めてしまう。根が真面目な彼女にとって、目上の人物の言葉は「全て正しい」と認識してしまい、自己嫌悪に陥ることが多い。
それは、美点と同時に欠点。指摘によってこのような方向へ向かってしまうとは、エイルにとっては予想外だったので、言葉に詰まってしまう。一体、何と――しかし、良い言葉はない。
正直、他のメイド達の方が話し易かったが、それを口に出すことはない。それに口に出したらマナが可哀想で、彼女の悪い噂は聞いていない。日々真面目に仕事を行っているのだろう、それはそれで素晴らしい。
良い面を強調してしまうと、悪い面が目に付いてしまう。そのことがメイドの仕事の邪魔になっていることはなかったが、途切れ途切れになってしまう言葉は直さないといけない。
このままの性格では、いずれ問題が生じてしまう。無論、マナもそのことはわかっていたが、実行するには時間が掛かってしまう。地の性格改善は、予想以上に大変なものである。
「す、すみません」
「謝ることはないよ」
「で、ですが……」
「これから、顔を合わす回数が増えるからね。今のマナの振る舞いだと、僕が悪いことをしたのではないかと、勘違いされてしまいそうだから。だから、普通に接して構わないから」
「はい」
エイルの言葉に反応するかのように返事を返していたが、マナは「普通に」という単語の意味をわかっていない。何を持って、普通を示すのか。それは世間体か、それともエイルの価値観か。
不思議そうに首を傾げているマナにエイルは、変に気張らなくていいと話す。いつものように仕事を行い、他の人物に接しているように接してくれればいいという。その説明にマナは首を縦に振ると「そのようにできるよう、努力します」と宣言し、エイルを再び困らせてしまう。
「忙しい?」
「いえ、特にありません」
「なら、頼みごとが……」
その内容というのは、買い物に同伴してほしいというものであった。エイルが買いに行くのは参考書。親衛隊の試験を受ける為に帰郷したとはいえ、メルダースの生徒には変わりない。第一、学力を下げたくない。また、少しの油断が留年に繋がってしまい、目標の卒業が遠のいてしまう。


