仕方ないという思いで、エイルはアルフレッドを馬車の中へ導く。するとアルフレッドはエイルが言葉を発する前から、馬車に乗り込んでいた。椅子に腰掛けた瞬間、馬車が一定方向に向かって沈む。急に揺れた馬車にハーマンは勿論、馬も驚いてしまう。筋肉隆々の肉体は、予想以上に重かった。
「馬車を壊さないで下さい」
「これくらいでは、壊れないよ」
「それは、わかりません。貴方の体重は、一般人より重いようですから。壊したら、弁償です」
「金は、ないよ」
「強制労働です」
冗談とも思える言葉であったが、エイルは嘘を言っていない。本当に壊れたら、強制労働をさせる気でいた。それに、筋肉ムキムキの体格。少しのことで壊れることは、絶対にない。
「本気?」
「勿論です」
「わ、わかったよ」
間髪いれずに返ってきた言葉に、アルフレッドは素直に従うことにした。いくら体力に自信があるとはいえ、強制労働は好んで行うものではない。それに、監視がつくことになるだろう。
そうなってしまうと、自由がない。このように見えて、自由奔放を愛するアルフレッド。監視は彼の精神をおかしくしてしまい、異常行動を起こす。結果、周囲に多大なる迷惑が被る。
「もっと奥へ行って下さい。僕が、乗れないじゃないですか。それとも、荷物を出しますよ」
「怖い冗談だ」
それに続き笑い声が響き渡るが、その声音は震えていた。それに、額に汗が滲み出ている。どうやら先程の出来事でエイルの恐ろしい一面を学習したのだろう、巨大な図体を小さくする。しかし狭い馬車の中なので、頑張って身を縮めてもそれほどのスペースが取れるわけではない。
それにエイルは、長時間一緒にいるということが苦痛で仕方がない。その為、ひとつの提案を思い付いた。この作戦には、協力者が必要となる。エイルはアルフレッドを無視するようにハーマンのもとへ向かうと、小声で囁く。
その瞬間、ハーマンの表情が変わった。エイルの意見に同調したのだろう、面白そうに口元を緩めた。誰も、アルフレッドの味方はしない。自分勝手の思考能力の持ち主に、付き合ってはいられない。それに馬車を壊しかねない体重なので、ハーマンにとっては迷惑この上ない。


