「ほら、出そう」
「何故、貴方が命令するのですか」
「いいじゃないか」
「そのように、思いません! それに、荷物は持っていかないのですか? あれでは、他人が持っていきますよ」
エイルからの指摘にアルフレッドは、慌てて馬車から降りると自身の荷物を探しに行く。その瞬間、馬車の扉が閉められた。それは「締め出し」という言葉が似合い、完全に置いていかれた。
両肩に荷物を担ぐと、アルフレッドは馬車に向かって走り出した。だが相手は走ることに長けた馬なので、人間が追いつくわけがないが、アルフレッドは額に汗を滲ませながら走っている。そして何を思ったのかエイルの名前を連呼しはじめ、切ない声で泣きはじめた。
当初はそのままにしておくべきだと思っていたが、このように騒がれると聊か問題が生じる。
何より、多くの人間に名前を知られてしまう。別に何ら問題はないと思われるが、エイルにしてみれば厄介なことなので、ハーマンに馬車を止めるように告げるとエイルは馬車から降りる。そして、アルフレッドのもとへ向かった。しかし表情は、相変わらず仏頂面である。
「煩い」
「行ってしまうからだよ」
「行くのは、悪いのですか?」
「約束したじゃないか」
「何を?」
エイルは冷静な態度で、次々と否定の言葉を発していく。約束と言っているが、エイルはアルフレッドと約束した覚えはない。そもそも、一方的な約束事。約束は互いが同意していなければ成立にはならないので、今回の約束事はアルフレッドの勝手な妄想になってしまう。
「ほら、一緒に行くという……」
「知らない」
「忘れては、困るよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……」
そう言われた瞬間、アルフレッドは固まってしまう。この質問に対しての回答は、あまりにも難しかったからだ。アルフレッドにしてみれば、約束事を遂行しようと思っていただけ。しかしエイルは知らないと言い続け、互いに話が噛み合っていないので、全く話は進まない。


