魔法は六種の元素によって構成され、己の魔力によって実体化し目的に合わせ変化させる。
エイルは本を眺めつつ、はじめて魔法を学んだ時に言われた言葉を呟く。
それは全ての基礎であるので、忘れずに覚えていた。
(何だか、懐かしいな)
懐かしい思い出に微笑を浮かべると、今度は違う本を手に取ることにした。
それは、この世界の地理について書かれた書物。
現代に伝わっている魔法の発展と用途は、それぞれの土地によって大きく変化を遂げているので、魔法を学ぶときは地理も覚えないといけない。
世界には数種の国が存在し、土地によって風習も違えば文化も大きく異なる。
魔法の研究もそれらが影響し、その土地の一番強い属性の魔法が発達する。
その他に、生活に役立つ魔法。これも研究対象の一部だ。
人間が持つ属性は、その土地に関係すると思われているが、実はそうではないらしい。
メルダースの生徒の中にも暮らしていた土地が持つ属性と、自分が持つ属性が一致しないという生徒が多い。
どのようにして生来の属性が決まるかは、研究者の間では謎とさている。
今後の研究に期待と言いたいが、この研究が開始されて数百年。
いまだに正しい結論が出されていないところを見ると、かなりの難問のだろう。
そしてこの謎を解明した人がいれば、歴史書に名が残るとエイルは考える。
「これは……」
文章の中に、懐かしい名前を発見する。
それは、エイルの故郷の名前。
メルダースに入学した後、一度も帰っていない遠い場所。
記憶の奥底に閉じ込めた、忘れたと思っていた国。
クローディア王国。
国土は小さいが、美しい自然と湖が広がる平和な所。
メルダースがあるモーレン地方より更に北に位置しているが、豊穣に恵まれた大地が広がる。
また、良質な水晶が唯一採掘されることでも有名だ。
この国は、法と審判の女神エメリスを信仰している。
その信仰の篤さは目を見張るものがあり、特にエメリスの加護を受けているとされている王家に対する信頼は、とても高かった。
特に加護は直系の男性に表れることが多く、民の間では〈エメリスの御子〉と、呼ばれていた。
その加護とは、一体どのようなものか――
しかし、誰も判断できない。
王家の人間もわからないというが、確実に加護は受けていた。
それらは目に見えて「何か」というものではなかったが、多くの民がそれを感じ取っていた。
それにより王家の人間、特に男性はエメリス同様神聖な存在として崇められている。


