煩い質問に、エイルはグラスに注がれた液体を一気に飲み干す。そしてガツンと音をたて、テーブルの上に置いた。其処から漂うのは、切っ先のように尖った怒りの感情。そのことに周囲にいた者達は戦いてしまうが、動じない人物も存在する。そう、目の前の人物だ。
鈍感なのか、それともタフなのか。どちらにせよ、肝が据わっている。または、関係ないと決め込んだのか。それ以上の反応は見せない。
「しつこいです」
「怒ることは、ないだろ」
「いえ、怒ります。怒らない方が、おかしいです。貴方は、何者ですか? 何がしたいのか、わかりません」
「暇だから、質問しただけだよ」
相手の言葉に、エイルはプチっという音が聞こえた。何故、見ず知らずの相手に質問をされなければいけない。それも、素行調査に等しい内容であるから堪らない。それに、相手の名前も知らないまま。そのような人物にベラベラと喋るほど、エイルは気楽な性格の持ち主ではない。
「理由になっていません」
「厳しいな」
「別に、厳しくはありません」
「なら、正直に言う。俺は、親衛隊に入隊する為に帰ってきたんだ。近々、試験が行われると聞いた」
「そうですか」
「凄いだろ?」
胸を張りながら言う台詞に、偽りは感じられない。つまり彼の本音は、今の言葉に表れていた。
親衛隊の試験を――その意外な内容に、エイルは相手の顔を見詰める。そして上から下へと視線を動かすと、ある一点で目が止まった。それは、テーブルに立てかけてあった鞘に納められた剣である。
「それは?」
「ああ、剣だ」
「それは、見ればわかります」
「冗談だよ。俺は剣の修行の為に、様々な場所を巡っていたんだ。いつか、剣で身を立てたいと思っていて」
彼は、武者修行から帰ってきたというところだろう。どれくらいの腕を持っているのか見た目ではわからないが、親衛隊を目指すのだから腕前は高いに違いない。現に、中途半端な者は受け入れることはしない。相手は、王家の人間。その身に何かがあったら、一大事だ。


