ロスト・クロニクル~前編~


 最近、いい加減な気分でメルダースを目指す人物が多い。それ以前に、あの学園のレベルの高さをわかっていない。どのような人物が入学し、どのような人物が留年や退学を行ってしまうのか。噂になるほどの学園なのだから調べれば簡単にわかるものだが、それさえ行わない者が目立つ。

「どうして、貴方のような人物が多いのですか」

「俺は、何かしたかな?」

「しました。不真面目な考えでメルダースの入学試験を受けた為に、本当に志望していた人物が受けられませんでした。入学試験は、全員が行えるわけではないのです。決まった人数があり、それ以上になってしまうと、来年に回されてしまいます。それなのに、貴方という人は――」

 息継ぎなしで喋った為にエイルは肩で息をしていたが、これでは怒りは収まらない。かなりの怒りを内に秘めているのだろう、喋り終えたと同時に睨みつけていた。それに、殺気も放つ。

「そ、そこまで言うことは――」

「いえ、言わせて頂きます」

 死に物狂いで勉強を行っているエイルにしてみたら、気楽な相手は嫌いであった。知識を有するには、それ同等の努力と時間が必要だったりする。自慢話を滅多に行わないエイルであるが、メルダースでの生活は胸を張って自慢できる。現に、それだけの実績を残していた。

「わ、悪かった」

「わかればいいです」

 相手が折れてくれたことに溜息をつくと、エイルは横を向いてしまう。目を合わせると愚痴を言ってしまうと思ったのだろう、相手が言葉を掛けてこようが視線を合わせることはしない。

 相手は臍を曲げたエイルに肩を竦め、呆れてしまう。しかし、席を外そうとはしない。面白い人物――どうやら面白い人物と認識したのだろう、先程のやり取りは何処へやら。今度は、エイルに質問攻めにする。

「クローディア出身かな?」

「そうですけど」

「旅行か? それとも、帰郷か?」

「実家に帰ります。いけませんか?」

「いや、そんなことはない。実は、俺も同じだ」

 語られる内容に、エイルは興味を示さない。旅を行っている人物の大半は、旅行をしているか実家へ帰郷するか、はたまた仕事で出歩いている。稀にそれに当て嵌まらない人物も存在するが、そのような人物は人目に付かないように動くものなので、このように馴れ馴れしく話してはこない。