これで、処分のことで頭を悩ますことはなくなった。だが、今度は新たなる問題が発生してしまう。それは目の前の人物が、馴れ馴れしく声を掛けてきたのだ。何処でエイルの身分を知ったのだろう、メルダースの生徒か尋ねてくる。それも、興味津津という表情で――
「どうして、それを――」
「先程、聞いた」
「先程?」
「国境での話しだよ」
語られた答えに、エイルは妙に納得していた。あの時、メルダースの生徒ということで、国境を警備している兵士達に様々な質問をぶつけられた。どのような場所へ行こうとも、メルダースの名前は強い力を持つ。
一国に等しい……いや、それ以上の力を持つ学園。それと同時に、クリスティの偉大さを再認識する。しかし、彼女は全ての生徒に優しくはない。特に、ラルフのような生徒は厳しい。
一方、真面目な生徒には優しい。クリスティの性格に迷惑したことが多いが、特に被害を被ったことはない。それは喜ばしいことであったが、このようにおかしな困った人物が釣れる場合がある。やはりメルダースの内情を知りたいのだろう、詳しく聞きだそうと相手は身を乗り出してきた。
「メルダースって、難しいのかな?」
「難しいですね」
「以前、試験を受けようとした」
「で、どうしたのですか?」
「落ちた」
相手は、特に落ち込んでいる様子はない。そもそもメルダースという場所は落ちて当たり前なので、留年・退学は、恥ずかしい概念に含まれない。だからこそ、気にする者は珍しい。
だがエイルの場合、留年と退学をするわけにはいかないので、試験は一回で合格するように努力する。だからこそ、落ちてヘラヘラしている人物が気に入らない。落ちるとわかっていようが全力で取り組むもので、それだというのに相手はその努力さえ怠っていたことにエイルは腹立たしさを覚える。
「中途半端で、受けたから悪いのです」
「おっ! な、何だ」
急に怒り出したことに、男は目を丸くしてしまう。何か悪いことを言ったのかと尋ねるが、エイルは何も答えようとはしない。知らないからこそ、このような発言をしてしまう。そのことはわかっていたがエイルにしてみれば、相手の言動のひとつひとつが引っ掛かって仕方がない。


