だからこそ、相手を売る。規則が厳しいことで有名なメルダース。それを破った方が、全て悪い。目の前で繰り広げられている会話に、ラルフは言葉を挟むことができない。以前の出来事があるので自身がハリス売られることは判断できたが、それを止めることは不可能に近い。
「行くぞ!」
「で、これは?」
「持っていく? 俺は、嫌だな」
「俺だって、断るよ」
「気持ち悪いよな」
見るのはいいが、触れるのは拒む。それは、全員の意見であった。マルガリータは、キャシーを食べている。それは相手が植物なので今のところは被害がないが、もし人間を食べたら――
流石に、其処まで進化はしないと期待したい。もし人間を捕食するようなことがあれば、それこそ一大事。笑って済ませる内容ではなくなり、主犯格のラルフが捕まることになるだろう。
「エイルがいたらな」
「そう、思うね」
「エイルって、やっぱり偉大だよ」
「同感」
このような不思議な生き物を相手にしていたのだから、エイルの存在は大きい。だからこそ、いなくなってわかる相手の大切さ。早く帰ってきてほしいと願うが、故郷へ帰郷となると時期は不明だった。
一斉に、深い溜息がつかれる。それが全員の心中を表しており、嘆きに等しいものであった。
そして、数時間後――
マルガリータの処遇について、会議が行われた。
◇◆◇◆◇◆
同時刻、エイルはクローディア国内に存在する小さな村に立ち寄っていた。此処は、村にただひとつ存在する食堂。それも名ばかりのもので、十数人ほどでいっぱいになってしまうほど狭い。
それに内装はとても質素で、最低限の物しか置かれていない。明らかに店主が趣味で経営しているのだろう、樫の木で作られたテーブルの上には林檎を搾って作られた飲み物と焼き菓子が置かれていたが、全く手をつけていない。それは長旅の影響か、顔に疲労が滲み出ている。


