「こ、これは……」
「これは?」
「マルガリータちゃんが、キャシーちゃんを食べている」
「はい?」
意味不明な内容に、ラルフ以外の全員が間の抜けた声を発した。植物が植物を食べるというのは、聞いたことがない。確か、キャシーは食虫植物。それにマルガリータは、原型を止めてはいないが元は山百合であった。植物界の力関係でいえば、食虫植物が強いと思われる。
しかし、そんな力関係はラルフが育てる植物には通用しない。現に、このようにキャシーがマルガリータに食われているのだから。だが、それはラルフの見方で、正しくは融合が適切だった。
「融合じゃないのか?」
「違う。食われている」
「ひとつ質問していいか? 植物同士なら、普通は融合。または、吸収。食われるというのは、血の通った生き物が――」
「マルガリータちゃんには、歯が生えているよ」
ラルフの言葉に、全員が凍りついた。植物に、歯が生える。その信じがたい内容に一部の生徒は聞き返してしまうが、返ってきた言葉は先程と同じ内容。それにより、数名の生徒が気絶した。
「ちょっと待て! 何で、歯が生えるんだ」
「進化したんだよ」
「このようなこと、進化で片付けるな」
「それ、エイルにも言われた」
サラリと返してくるラルフは、もはや言葉が通じる人間ではなかった。まるで異世界の生物と会話をしているような感覚に陥り、頭痛の種となる。同時に、その歯というものが見たい心境に狩られる。
「これだよ」
「うわ! 本当に、生えている」
「これって、歯というより牙じゃないか」
「おまけに、細かく生えているな」
キャシーを飲み込もうと広げていた花弁の一枚を裏返すと、其処にはびっしりと歯――もとい牙は並んでいた。
普通、山百合の花の中は雄しべと雌しべがあるが、進化したマルガリータの雄しべと雌しべは明らかに違う。これは、進化の途中というべきものか。特に雌しべは、鞭のようなしなやかさがあった。多分、これで生き物を捕獲するのだろう。こうなると、完璧に食虫植物だ。


