ロスト・クロニクル~前編~


 ラルフに自分達の目的を話すべきではなかったが、勘がいいとなると最終的にはわかってしまう。それなら、この場で見捨ててしまえばいい。所詮、ラルフはそこまでの存在である。可哀想なことに、多くの生徒の興味を引き付けるだけの「魅力とカリスマ性」が足りなかった。

 彼等にとって“あれ”は、良い刺激を与えてくれた。だからこそ、強制的に……いや、この場合は自主的というべきだろう。ラルフに実験を行わせようと、様々なことを計画していた。

 だが、結果はこのようなもの。冷めてしまった熱を取り戻すことはできず、ただ虚しさだけが残った。

「面倒だから、終わりだな」

「じ、実験は?」

「興味ない」

「だって、あの時は――」

「あの時は、あの時。それに、エイルの言葉も確かめたかったから。例の“あれ”に関しては、いつでもできるし」

 軽く流してしまう程度の内容であったが、其処には深い意味合いが含まれていた。つまり、ラルフを陥れることなど簡単ということ。またエイルが帰ってくれば、毎日のように“あれ”が楽しめる。

 エイル同様、彼等の腹の中はどす黒い。こう考えると物事に一直線のラルフは、純粋な精神の持ち主であろう。だからこそ、エイルを筆頭にラルフは虐められる。しかし受身のラルフは、それに気付いていない。

「で、例の植物は?」

「やっぱり、興味があるんだ」

「実験には興味ないけど、植物には興味があるんだよ。わかるかな? その差は、大きいよ」

 無論、簡単に理解できるものではない。そもそもマルガリータは、ラルフの怪しい実験によって誕生したものなので、ラルフにしてみたらどちらも一緒。だが、他人から見ればマルガリータは突然変異の新品種。それに、一度昇天した身分。それがどのような経緯を辿って復活したのか、其処に興味がある。

「あれじゃないか」

「相変わらず、おかしな植物だね」

「本当だ。ふたつの植物が、融合しているよ」

 その聞き慣れない単語に、ラルフはガバっと立ち上がった。そして急いで鉢植えが置かれた窓際まで向かうと、マルガリータとキャシーの様子を見る。次の瞬間、悲鳴がこだました。まさにそれは、珍事件。そして植物界では有り得ない状況であり、珍しくラルフが驚く。