笑みを浮かべていた生徒達は、急に無表情になってしまう。だが、目は笑っていた。どのように取り繕うが、心の中まで変えることはできない。それが見事に表れた表情は、悪魔に近かった。
「つまらない」
「つまらないのなら、帰ってほしいな」
「それは、できないんだよね」
「何で、俺に付きまとう」
「面白いから」
「理由に、なっていないよ」
その言葉に対し生徒全員が、同じ反応を見せる。同時にポンっと手を叩くと、これまた一斉に同じ方向を指差す。指し示されたのは、ラルフの顔面。その一糸乱れない動きに、ラルフは間の抜けた表情を作る。
「な、何?」
「エイルが言った通りだ」
「流石、彼だよ」
「見事に、見抜いている」
交わされる会話に、ラルフは首を傾げてしまう。そして一人一人の顔を見ていくと、何を話しているのか尋ねた。すると、衝撃的な内容が返される。何と彼等は、お芝居をしていたのだ。
「な、なら……」
「実験なんて、やってほしいとは思わない」
「やらせたなんてわかったら、俺達が怒られる。そんな危険な真似までして、見たいとは思わない」
語られる真実にラルフは、悲鳴を発しながら暴れてしまう。嫌がる素振りを見せていたが、彼等が構ってくれたことに内心は喜んでいた。しかし、結果はこのようなもの。悲しくて涙も出ない。
そして「エイルが言っていた」という意味合いは、ラルフの性格を見抜いていたものであった。普段、不真面目な態度を取っているが、いざとなれば真面目な一面を見せる、尚且つ勘がいい。
周囲はラルフで遊ぼうとしていたが、エイルの方は冷ややかな態度を見せていた。ラルフは、一筋縄ではいかない人物と言っていた。それを見事に証明されたことに、彼等はエイルの洞察力に驚く。
流石、二人は腐れ縁の持ち主。それがわかった途端、生徒達の熱は冷めてしまう。彼等にしてみたら、自分達の意見に従ってほしかった。そして最終的には、いつもの“あれ”を見たいと考えていたが、それも叶わない。上手く誘導しているつもりであったが、やはり難しかった。


