だが動いた瞬間、殴られた箇所に激痛が走った。
結果、顔面から床に倒れ込んでしまう。
同時に爆笑がこだまし、やはり誰も助けようとはしない。
所詮相手がラルフなので、どうでもいいらしい。
しかしフランソワーへの愛情が、ラルフを突き動かす。
驚異的な回復力を見せると立ち上がり、大声で彼女の名前を叫びながら後を追った。
今まで傍観していた生徒達は何事もなかったかのように、次の授業へと向かう。
そう授業の開始を知らせる鐘が、鳴り響いていたからだ。
だが、静寂が訪れることはなかった。
◇◆◇◆◇◆
授業に出席せずにフランソワーの捜索をしているラルフのことを忘れ去ったエイルは、図書室でレポートの続きを書いていた。
予想通り、図書室は貸切状態。
高度な授業内容で有名な学園で学んでいるというのに、どうやらクラスメイト達は“遊ぶ”ことを優先したらしい。
内心「クラスメイトがいたら……」と思っていたエイルであったが、予想が当たったことを素直に喜んでしまう。
ある意味、彼にとって図書室はお気に入りの場所なので、貸し切り状態は有難い。
エイルは椅子にカバンを置くと、参考となる本を探しはじめる。
歴史書に文献、それに魔法関連の書物。
その量は半端なく、真面目に読んでいたら自習時間が終了してしまうだろう。
本当は時間を掛けて読みたいが、今回は適当に読み必要かそうでないかを判断していく。
それに図書室に置かれている本の大半は、高度な内容が書かれている。
もし知識が乏しい人間であったら、頭が痛くなってしまう。
このような場所でもわかるように、メルダースの授業は常識を離れしている。
この学園で勉強を行っている者が頭痛を起こすのだから、外部の人間がこれらを読んだら……
いや、その前に読みこなす力があるかどうか不明だ。
これらの本の内容を読み解くには、相当な読解力が必要となる。
最低限の知識と読解力――エイルは、思わず溜息をつく。
(そう言えば、魔法って……)
文献に「魔法の誕生は、一人の高名な魔導師によって生み出された」と書いてあったことを思い出す。
しかし魔導師はその方法を生み出しただけで、一般的に使われている魔法の大半は現代に入り作られたといっていい。
結局この魔導師は何もしていないと思われるが、基礎を作り上げたのだから偉大といえよう。
それだというのに、その者の名前は歴史に残されていない。


