立派な大人になれるのか。
それは最大の疑問であったが、同時にどうでもいい内容でもあった。立派な大人になれるかなれないかは本人の努力次第なので、他人が心配する問題ではない。いや、それ以前に誰も心配はしない。
多少の好奇心で引かれるだろうが、所詮はその程度。其処から大きく発展することはなく、いずれは消えてしまう。ラルフに関してのネタは、いつもこのようなもの。話題性に事欠かないので、消えるのは早い。
「おかしな奴だ」
「まあ、静からだからいいんじゃないか」
「でも、寂しいというのも正直なところかな。結構、楽しんで聞いていたし。あの悲鳴は、面白い」
「一種の名物だったからな」
笑いながら交わされる会話は、例の悲鳴についてであった。聞く人によっては「煩い」と取れる出来事であるが、生徒の中でそのように思う者は少ない。大半が「面白い」と片付け、楽しんで聞いているほどだ。
いわば、そよ風に等しい音。そして、逆にそれが聞けなくなってしまうのは寂しいので、無理にでも悲鳴を上げさせようと策略を練る。先程の誘い文句もそのひとつであったが、失敗に終わってしまった。
「別の方法を考えないと」
「あれで、変に勘がいいからな」
「やっぱり、関節技が一番か」
「だけど、あれは特別な技だぞ」
あの見る物を惹きつける素晴らしい関節技ができるのは、エイルしかいない。だが、そのエイルは不在なので、別の方面から攻めるのが一番だろうが、残念ながらその方法は少ない。
実験に誘いそのまま――というのが数少ない作戦のひとつであった為、それ以上のことは考えていなかった。
「こうなったら、実力行使」
「それしかないか」
最終手段に等しい内容であったが、誰一人として反論する者はいない。皆、学園の名物を復活させたいという気持ちは一緒で、一致団結をする。そして一斉に、ラルフの後を追った。
やられる側にしてみたらこれ以上の苦痛はないが、彼等にそのようなことは関係なかった。ただ「楽しめればいい」というかなり個人的な理由で、ラルフの捜索が開始することにした。全ては好奇心を満たす為で、それ以外のことは考えられないという考えの中で彼等は動く。


