「なら、明日」
「明日も、忙しいかな」
実験という言葉に飛びついてこないラルフに、ケインを含め多くの生徒達は首を傾げ不審そうな表情を作った。いつもなら、どのような状況に追い込まれていようとも、実験を強行する。
断ったとなると、いつものラルフではない。何か特別な事情があるのか、それともおかしな物を食したことにより神経系統をやられたか。この場合、後者だと考えるのが妥当であったが、前者ということも考えられないわけでもない。何故なら、ラルフが大人しすぎるからだ。
「エイルに――」
「そ、それは……」
何気なく発せられた名前に、ラルフの身体が過敏に反応を見せる。それにより、ラルフが大人しい意味が判明した。
エイルは、普通に帰郷したわけではなかった。自分がいなくなった後のことを考え、それなりの手を打っていたのだ。そのひとつとして、ラルフとの間にいくつかの約束事をしていた。それが影響しラルフは自由に動くことができず、このように大人しく勉強するしかない。
その1、メルダースに戻ったと同時に、学力テストを行う。その結果次第では、恐ろしい罰を下す。
その2、周囲に迷惑をかける実験が行われたと報告があった場合、メルダースの外に吊るされる。
その3、マルガリータ及びキャシーに対して不必要な栄養剤使用は、禁止とする。破られた場合は、焼却の対象となる。また怪しい進化が行われた場合、これもまた焼却の対象とする。
その4、クローディアに来るな!
以上、それらを守れない場合は、厳重な処分とする。
無論、容赦はしない。
普通に学園生活を送っている者ならこの内容は苦になることはないが、ラルフの場合は違っていた。研究と実験ができないことは、最大級の苦痛。ストレスが溜まって、仕方がない。
それでもエイルとの約束を真面目に守るのは、間違ってエイルにこのことが伝わってしまったらどうなってしまうのかという、恐ろしい想像をしてしまうからだ。更に、下手したら口から魂が抜ける。それほどエイルは恐怖の対象で、メルダースを早く卒業したかった。


