バタン。
乾いた音をたて、扉が閉まる。だが、ジグレッドは動こうとはしない。ただ一点を見つめ、思いを馳せる。
そして、悲しき使命を嘆いた。
◇◆◇◆◇◆
あれから、一週間が経過した。
その間、メルダースでは事件という事件は発生せず、静寂が保たれていた。珍しくラルフは危ない実験を行わず、黙々と勉強に勤しむ。その行動は逆に不安を煽り、おかしな噂を生み出す。
それに付属するかたちでエイルが帰郷したという話は、瞬く間のうちに多くの生徒の間に広まっていった。それにより、誰もが恐怖を覚えたという。ラルフを止められるのは、エイルしかいない。
そのエイルが不在ということは、トラブルが発生した場合、止める人物がいないということだ。つまり、ラルフにとっては楽園であり天国。これほど心地良い学園生活はなく、清々しい毎日を送っていた。
ラルフがいつ変貌するかわかったものではない。今はおとなしい態度を見せているが絶対に怪しい研究を行うと、誰もが思っていた。それにより、ラルフは監視の対象となってしまう。
少しでも不穏な行動を起こした場合、即ジグレッドへ報告が行く。そして適切な命令と指令が下され、多くの教師達が対処へと向かう。それに対し、一人の生徒の為にここまでしないといけないとは――という意見もないわけではないが、相手が相手なので仕方がない。
それに、メルダースの名前を護る為には何でもしないといけない。あのまま素行の悪い生徒をのさばらせていては、メルダースの地位が著しく低下してしまう。その問題の人物であるラルフは、図書室に居座り勉強を続けていた。それは異様な光景であり、生徒達の冷たい視線を一点に集める。
「信じられない」
「天変地異の前触れだな」
「嫌よ! 私、死にたくない」
「俺だって、死にたくない」
だが、本人は気にしている様子はない。ただ黙々と勉強を続け、日々の難しい授業に備える。それは立派なことだと認識されないといけないのだが、やはり相手が相手。勉強をしていることは常識外れの内容だと思われており、多くの生徒の笑いの対象となってしまう。


