「決めたようだね」
「はい。申し訳ありません」
「今回の件に関しては、此方が何かを言う問題ではない。だが、よく決めた……いや、そうだな」
何かを言おうとしていたジグレッドだが、途中で言葉を止めてしまう。今回の帰郷に関しては、エイルの一族――バゼラード家のお家問題。いくら力があるメルダースとはいえ、口出しをしていい内容ではない。
下手に口出しをした場合、大事に発展しまい、最悪国際問題になってしまう。それだけバゼラード家は名門中の名門で、その動向が注目される。そしてクローディア王家と深い繋がある一族のお家問題に、其処にメルダースが介入してきたとなれば噂に尾鰭がついてしまう。
「兄は、無理です」
「だから、君が――」
「バゼラード家は、代々王室親衛隊を排出しております。ですが兄は、生まれつき身体が強い方でないです。魔法に関しての才能も……ましてや、剣を振ることもできません。ですから……」
「知力は、高いようだね」
その言葉に、無言で頷き返す。エイルの兄イルーズは親衛隊に入隊はできなかったが、その知識を買われ城で働いている。形は違えども国の役に立っているという点では、バゼラードの意味合いをこなしていた。
それで、周囲が満足するわけがない。だからこそ、イルーズは批判の対象となってしまった。
何故、今更――
エイルは手紙を受け取った時に、そう感じた。今まで文句を言わなかった者達が、あれこれと言葉を発する。其処に恨み妬みが存在しないというのは嘘になるが、状況が以前と変わったと捉えるのが妥当だろう。だからこそ父親は手紙を寄越し、エイルの帰宅を促した。
「長い歴史を持つ一族は、その時間の分だけの荷物を背負う。周囲の期待も、それに等しいことだ」
「兄は、役に立っています」
「しかし、親衛隊の一員ではない」
「確かに、そうですね」
ジグレッドの言葉に、エイルは力なく頷く。たとえどのような状況であろうと、子供は親の後を継がないといけない。それが代々続いているとなれば尚更のことであり、できない者は罵倒される。イルーズは今、その立場に置かれていた。そしてそれを回避する方法は、エイルが後を継ぐことだ。


