これだけで、この帰郷が大変だということがわかる。それに山越えを甘く見たら、死んでしまう。
一通り荷物を仕舞い終えると、エイルは息を吐く。そして机の上に置いてあった手紙を手に取ると、声を出さずに読んでいく。その瞬間、表情が曇る。手紙には、気になる内容が書かれていたのだ。
ことの始まりは昨日の夕方、エイルに手紙が届けられたところからはじまった。差出人は、エイルの父親。当初は「いつもの内容」と気にもしていなかったが、書かれていた内容に驚いてしまう。
イルーズが危ない。
その名前に、エイルは強い衝撃を覚えた。
イルーズとは、エイルの兄の名前。彼はエイルとは正反対の性格の持ち主で、男の割には活発ではない。そして外で滅多に遊ばない為に色白で、ひ弱なイメージが付きまとっていた。
だが体力面では普通の人には及ばないが、知識に関しては素晴らしいものを持っていた。頭の回転が速く、若くして城で財務関係の仕事を行っている。そんなイルーズに危険とは――
手紙には詳しく書かれていなかったが、何か悪い予感がした。それ以前に故郷クローディアには、悪い噂が絶えない。だからこそエイルは今回、故郷に帰ることを選んだ。いやその前に帰郷しないといけないので、不謹慎であるが自身の将来を決めるにはちょうどいい機会でもあった。
新学期がはじまる前に、旅とは――下手すれば、数ヶ月は帰って来ることはできないだろう。授業は補習で穴埋めをするとはいえ、大変なことは間違いない。こうなると、実家で勉強の毎日になってしまう。
しかし、帰らないといけない。いくらメルダースの授業が大切とはいえ、実の兄を見捨てるわけにはいかなかった。それに、クローディアの今を知ることも、大切なことであった。
「これで、いいかな」
準備を終えた荷物をチェックしていく。思った以上の大荷物にげんなりしてしまうが、教科書や参考書は必需品なので、持っていかないわけにはいかない。それだけ、勉強は大切である。
そして、成績を落としたくはない。これこそエイルにとって重要であり、留年しない方法であった。
それなら旅の出発は、早い方がいい。そうすれば、ゆっくりと勉強を行える。そう結論を出したエイルは荷物を持つと、部屋から出て行こうとする。その瞬間、ラルフとばったりと出会ってしまった。どうやら待ち伏せをしていたらしく、ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべている。


