「おーい、エイル」
その時、後方から悲しげな声が聞こえてきた。切なすぎる声音にエイルは肩を竦めると、仕方ないという素振りで振り返る。そして、先程と変わらない体勢を見せているラルフのもとへ向かった。
「助けて」
「自分で、起きろ」
「無理だよ」
「気合だよ。いつも言っているだろ?」
「そうだけど、時と場合による。あああ! 何だか頭の周辺がおかしくなってきた。早く助けて」
「まったく、仕方ないな」
見れば、ラルフの顔が徐々に赤く染まっていった。どうやら血が頭に逆流しているのだろう、流石にこのままでは危険であった。エイルは横からラルフの身体を押し、助け出す。しかしその瞬間、頭に上った血が元に戻ったのだろう、今度は別の意味でラルフが大声を発した。
「もう少し、優しく……」
「助けてやったのに、そう言うか」
「だ、だって」
その言葉が気に入らなかったエイルは、ラルフの身体を先程の体勢へと戻そうとしていた。だが、そうはさせまいと瞬時にエイルとの間に距離を取るが、急に動いた影響でラルフは倒れてしまう。
地面に横になるラルフを見下すエイルは、特に言葉を投げ掛けることはない。ただ心の中で「馬鹿だ」と思いながら、クスクスと笑っている。その時、奇怪な呻き声が耳に届いた。
「き、気持ち悪い」
「吐くなよ」
「吐かないよ」
「吐いたら、自分で掃除な」
返事の代わりに、唸り声が返された。顔面を地面につけているので表情は確認できなかったが、青白い顔をしているだろう。先程は真っ赤で、今は青白い。その面白い変化に、エイルは声を上げて笑った。
「笑うな!」
その言葉と同時に、ラルフは顔を上げる。やはりその顔は予想通り、青白かった。これだけを見れば多少は同情心が湧いてくるものだが、いかんせん相手が相手なので同情心が湧いてこない。それにラルフに同情心を抱く時点で、何か大切なものを捨て去る感じがしてしまう。


