「まあ、この話は終わり。試験がはじまるよ。そちらに集中して見ないと、大変なことになるし」
「何、大変なことって?」
「魔法が飛んでくる」
「い、嫌だ」
「僕に言われても、困るんだけど」
そのように否定されたところで、飛んでくるものは仕方がない。魔法は制御方法を誤った場合、大半がおかしな方向へ飛んでしまう。魔法が使える者は己の魔力で弾き返すことができるが、ラルフは無理であった。
最悪の場合、魔法の直撃を食らってしまう。だが相手はラルフなので、このようなくらいでは死ぬことはない。それを証明するかのように、エイルはラルフ相手に魔法を使ったことがある。
その時は、見事に生還を果した。そのことを思い出したエイルは、冷たい声音で「大丈夫」と告げるが、ラルフは必死に否定した。怖いものは怖く、どうやら魔法がトラウマになっているらしい。
「助けてくれる」
「嫌だね」
「な、何で」
「もしもの場合、僕が助かりたいから。ラルフのように、魔法を食らっても生き残る自信はないし」
それは冷たい言葉に聞こえるが、エイルの言葉は正論が含まれていた。魔法を防ぐのは、簡単に見えて実は難しい。自分自身を守る場合は、己の身体のことを考えればいい。其処にラルフが含まれると、そちらを守ることも考えないといけないからだ。単体と複数――その差は大きい。
「あっ! 魔法」
「ひゃあ!」
その言葉に、ラルフは両手で頭を抱え身体を丸めてしまう。そして更に身体を震わせ、怖がっていた。それを見たエイルは笑い出すのを懸命に堪えながら、震える身体をポンっと叩いた。
「冗談だよ」
「……冗談?」
「そう、冗談」
しかし、信用はできなかった。今までのエイルの行動を考えると、油断できないというらしい。ラルフはゆっくりと周囲に視線を向けると、試験の状況を把握していく。試験は開始されていたが、特に被害があった様子はない。そして目の前では、エイルが笑っている。


