彼等は必死に勉強して進級と卒業を目指しているが、中には家計の負担を理由に途中で自主退学する生徒も多い。勉学についていけない生徒も含め、メルダースの生活は思った以上に厳しい。
それを表すかのように、卒業試験を受ける生徒の顔つきは真剣そのもの。誰もが卒業できるように、必死に勉強を行ってきた。いや、そうしなければいけない。でなければ、実家に更に迷惑を掛けてしまう。
目の下に隈ができているのは、努力の証。正直ここまでくると痛々しいものがあるが、同情をすることはしない。これはメルダースでは当たり前で、同情することは批判と同じだからだ。
それだけメルダースでは、勉強を第一に考えないといけない。無論、エイルはそのことを知っている。知っているからこそ、彼等に何も言おうとはしない。もし言葉に出してしまったら、相手は屈辱を覚える。
彼等の真剣な一面に気付いていないラルフは、相変わらずのほほんっとした態度を取っている。よくよく考えれば、ラルフが一番彼等を侮辱しているのだろう。緊張感がない態度は、ある意味失礼である。
「金持ちだったら、どうした?」
「お友達になりたい」
「どうせ、金目当てなんだろ? 払いきれない借金の一部分を補填して欲しい……と、言いたいんだろう?」
「エイルって、鋭いな」
「わかるよ。それくらい」
別にエイルの勘が鋭いというわけではなく、ラルフがわかり易い性格の持ち主なのである。
何の面識も無い相手と友情関係を築きたいというのには、何か裏の事情が隠されていると考えるのが普通の感覚。それに対象となる相手が「金持ち」となれば、答えは決まっている。
現在ラルフは、金銭面で困っている。それらを総合すれば「金が欲しいから」という結論に至る。エイルは何も言わなかったが、冷たい視線をラルフに向けている。一方のラルフは、笑っていた。
ラルフの笑みを見た瞬間、エイルは自身の家の内情を話してはいけないと気付く。幸い、ラルフは何も知らなかった。知らないということは、父親が元親衛隊と話したクラスメイトは周囲に話していないのだろう。
彼は、意外に口が堅い。そのことにエイルは心の中で感謝するも、更に口止めをしなければならないと思う。間違ってラルフに伝わってしまったら、煩いほど金をせびられるだろう。何より恐れることは、クローディアまでついて来てしまう。これだけは、絶対に避けなければならない。


