ロスト・クロニクル~前編~


「そんな、馬鹿な」

「馬鹿じゃない、事実だもん」

「だって、ほら……その……だろ?」

「ふふふふ。そのことか、ワトソン君。オオトカゲネットワークが、存在するのだよ。で、この前の休みの時にお見合いをした」

 その時、エイルはとあることを思い出す。

 それは数週間前、ラルフが何やら大きな荷物を抱え、寮から出て行く姿を目撃していた。

 あの時は特に不思議だとは思わなかったが、今思えば不自然すぎる。

 もう少しラルフの行動に注意を払っていれば、真実を早く知ることができた。

 あの荷物の中にフランソワーが隠されていたと思うのが、妥当なところだろう。

 そしてオオトカゲネットワークと呼ばれる団体の仲間と合流し、盛大なお見合いパーティが開催された。

 そして、今に至る。

「こう見えて、フランソワーちゃんはオオトカゲの世界では美人らしい。だから、モテモテだったんだ」

「ふーん、そなんだ」

「な、何! その投げやりの態度は」

「だって、オオトカゲには興味ないし。というか、そのオオトカゲネットワークってのもマニアな集まりなんじゃないか。で、早く見つけないといけないのでは? 子供の顔が見られなくなるぞ」

「おお! そうだね」

 その言葉に、ラルフは身体を震わせ反応を見せた。

 どうやらフランソワーの素晴らしさを語ることに夢中になってしまい「フランソワーを見付ける」という、肝心な部分を忘れてしまったようだ。

 慌てふためくラルフにエイルは悪魔の微笑を浮かべると、小馬鹿にしたような態度を取った。

「多分、見捨てたんだよ」

「そ、そんなことはない」

「そうなのかな? ねえ、フランソワー」

「もっと真剣に、捜してほしいな」

「どうしようかな」

「冷たいぞ!」

「だって、やることあるから」

 その時、絹を裂いたような悲鳴が響き渡った。

 それは女子生徒の悲鳴だけではなく、中には男子生徒の声も含まれていた。

 何かトラブルが発生した――ラルフは呆然と立ち尽くしていたが、エイルは悲鳴の意味合いを理解していた。

 そう、フランソワーが出現したのだ。