ロスト・クロニクル~前編~


「なら、ジグレッド教頭の所に行こう」

「拝み倒す」

「それが通じる相手だとは、思えないけど」

「いや、やってみなければわからないよ」

 しかし、堅物のジグレッドにそれが通じるわけがない。

 そのことは考えてみれば簡単にわかることであるが、ラルフは「遊びに行く」という感情が先走り、冷静な分析が行えなかった。

 それが、最大のミスであった。

 いや、それは今回だけではない。

 ラルフの場合、日頃からミスばかり起こしている。

 それなりの常識を持っているとしたら、普通このようなミスを繰り返さない。

 だが適切な判断ができないラルフは、ミスをミスとも思わないので、学園破壊を平然と行なう。

 そして今回「拝み倒せば平気」という根拠のない理由から、ジグレッド相手に暴挙に走る。

 案の定、ラルフは見事に玉砕してしまう。

 予想通り、ジグレッドにそのようなことは通じなかった。




「まったく、君という生徒は……」

 ジグレッドが発した第一声は、このようなもの。

 まさかそのような理由で訪れるとは思ってもみなかったらしく、青筋を立てている。

 その迫力にラルフは思わず戦くが、簡単に諦めはしない。

「エイルの付き添いです」

「本当なのか?」

「違います。ラルフの場合は、ただの遊びです。僕は本屋に行くのですが、同行は拒否しています」

 そのように本音を告げると、エイルは横を向いてしまう。

 更に日頃のお返しとばかりに、チラっと舌を出す。

 それを聞いたジグレッドはコホンと咳払いをすると、どちらが正しいのか尋ねた。

「後者です」

「いえ、前者です。ラルフは、自由を求めて外出をします。このような人物が学園にいることは、良くないことです。学園長の考えはわかりませんが、メルダースのイメージを損ねます」

「そうだな」

 ここぞとばかりに、エイルはラルフを貶していく。

 進級試験に合格してしまったことが相当悔しいのだろう、今度はメルダースから追い出す作戦を実行することにした。

 意外にも、ジグレッドは乗り気である。

 彼もまた「ラルフ」という生徒の問題行動に頭を痛めている一人であったからだ。