「なら、ジグレッド教頭の所に行こう」
「拝み倒す」
「それが通じる相手だとは、思えないけど」
「いや、やってみなければわからないよ」
しかし、堅物のジグレッドにそれが通じるわけがない。
そのことは考えてみれば簡単にわかることであるが、ラルフは「遊びに行く」という感情が先走り、冷静な分析が行えなかった。
それが、最大のミスであった。
いや、それは今回だけではない。
ラルフの場合、日頃からミスばかり起こしている。
それなりの常識を持っているとしたら、普通このようなミスを繰り返さない。
だが適切な判断ができないラルフは、ミスをミスとも思わないので、学園破壊を平然と行なう。
そして今回「拝み倒せば平気」という根拠のない理由から、ジグレッド相手に暴挙に走る。
案の定、ラルフは見事に玉砕してしまう。
予想通り、ジグレッドにそのようなことは通じなかった。
「まったく、君という生徒は……」
ジグレッドが発した第一声は、このようなもの。
まさかそのような理由で訪れるとは思ってもみなかったらしく、青筋を立てている。
その迫力にラルフは思わず戦くが、簡単に諦めはしない。
「エイルの付き添いです」
「本当なのか?」
「違います。ラルフの場合は、ただの遊びです。僕は本屋に行くのですが、同行は拒否しています」
そのように本音を告げると、エイルは横を向いてしまう。
更に日頃のお返しとばかりに、チラっと舌を出す。
それを聞いたジグレッドはコホンと咳払いをすると、どちらが正しいのか尋ねた。
「後者です」
「いえ、前者です。ラルフは、自由を求めて外出をします。このような人物が学園にいることは、良くないことです。学園長の考えはわかりませんが、メルダースのイメージを損ねます」
「そうだな」
ここぞとばかりに、エイルはラルフを貶していく。
進級試験に合格してしまったことが相当悔しいのだろう、今度はメルダースから追い出す作戦を実行することにした。
意外にも、ジグレッドは乗り気である。
彼もまた「ラルフ」という生徒の問題行動に頭を痛めている一人であったからだ。


