ロスト・クロニクル~前編~


 エイルは凝り固まった筋肉を解した後、これからの準備を行うことにした。

 最終学年になれば、早いうちから卒業のことを考えなければいけない。

 勉強の方法もそうだが、今までの復習もしないといけない。

 専門の本を大量に購入し、勉強していく。

 ますます大変な日常となってしまうが、これは仕方がない。

 これを怠ってしまえば、卒業ができない。

 いや真面目に勉強しようとも、卒業は難しい。

(ラルフは、どうなんだろう?)

 エイルのもとに届いたということは、ラルフのもとにも届いたことになる。

 何も言ってこないということは「不合格」と、書かれていたのか。

 もしそうであったら、エイルは凄く嬉しい。

 しかし、表面では冷静でいなければいけない。

 不合格を嘆き悲しみ、別れが辛いと嘘を発する。

 だがそれを冷静に行えるかどうか、不安である。

 何せラルフに関しては、苦手意識が強い。

 それなら、どのように振舞えばいいものか。

 いい方法がないかと考えていると、廊下が騒がしいことに気付く。

 誰がこのような音を発しているかは、エイルはすぐにわかった。

 このような走り方をするのは、ラルフしかいない。

 案の定、予想は的中する。

 ラルフは乱暴に扉を開けると、ズカズカとエイルの元へ近付いてくる。

 そして何かを話そうとした瞬間、表情が一変した。

 それは平手打ちをしようと、エイルが手を振り上げたのだ。

「殴らないで!」

「ノックもなしに、入ってくるな」

「ご、御免」

「で、何だ?」

「おお! そうだ、これを見てくれ」

 ラルフから手渡されたのは、合否が書かれた手紙。

 エイルは四つ折にされていた紙を開き、視線で文字を黙読していくと、途中でエイルの身体が小刻みに震えだした。

 それはまさに、異様な光景。

 ラルフは身の危険を感じたのか、一歩一歩と後ろに後退し、遠くからエイルを見詰めた。

「良かったね」

「よ、良かったよ」

「何か、裏取引でもしたのかな?」

「あの学園長に、それは無理だよ」

 その言葉に、エイルは舌打ちをしていた。

 確かに見た目はあのような性格の持ち主であるが、不正に関しては一切許さない。

 以前、裏口入学をしようとしていた家族を脅したのは有名な話だ。

 それに不真面目な生徒は嫌いなのでラルフとの取引が、成立するわけがない。