「つれないな」
ポツリと吐かれた言葉に、エイルは苦笑をしていた。
そう、世の中はつれない。そして何が正しいのか正しくないのか、わからないものだ。
だからこそ、この平穏な日々が大切なものである。
エイルにとって、大切なものはこのメルダースでの生活。
そして、このようなたわいの無い会話。
それらを失いたくはないので、今まで自分の人生についてあまり考えないようにしていた。
しかし、それは――
「で、エイルはどうするんだ?」
「何が?」
「先輩達の卒業試験見学」
「それ、ラルフに誘われている」
「はあ、大変だな」
将来の為に見学するというのは建前で、ラルフの場合は知的好奇心で見学を行う。
試験は密室で行うと思われるが、メルダースでは異なった方法を取る。
知識を問う試験以外は、下級生の見学が許されている。
その大きな意味は「不正を防ぐ」ということにあった。
流石に多くの生徒に見学されていれば、不正を行うことはできない。
それと同時に試験を受ける者の根性を見るという意味合いも含まれており「見られたら恥ずかしい、見られたから失敗した」という言い訳は通用しない。
将来、第一線で働く魔導師に研究者。
そのようなことで崩れるようであったら、働くことなどできない。
そのような部分も採点に加えるメルダースの卒業試験は、やはり侮れなかった。
「違う分野を見るのも、勉強になるよ」
「エイルらしいな」
「そうでもないよ。ラルフのお守りもしないといけないから、真剣に見ることはできないよ。何かが起こった時は、取り押さえないといけないし。場合によっては、魔法を使用かな」
「大変だ」
「時間ができたら、其方の試験内容も見に行くよ。研究関係の試験って、どのようなことをやるのか気になるしね。それじゃあ、僕はこれで行くよ。ラルフの様子を見に行かないといけない」
どのようなことが起ころうと、エイルはラルフの面倒を見なければいけなかった。
外見上では嫌がる素振りを見せていても、自分しか面倒を見る人物がいないとエイルは半分諦めていた。
エイルはラルフが生きているかどうか確かめに向かうと、思いっきり毒を吐こうと考えていた。


