ロスト・クロニクル~前編~


「そう、進級試験。できれば、早く結果を知りたいと思っている。その方が、これからの計画が立てやすいし」

「俺は、遅くてもいいな」

「どちらにしても、最後は知ることになるぞ。特に悲劇だったら、早めに知った方がいいよ」

「うっ! そうだな」

「噂では、今日中には知らされるようだ」

「ああ、合格をお願いします」

 胸の前で両手を組み、神に祈りだす。

 だが今頃祈ったところで、試験は終わってしまっている。

 世の中「奇跡」という言葉が存在する。

 そしてその奇跡を起こすのは神であるが、残念ながらメルダースのテストに奇跡を齎す神は存在しない。

 それだけ、配点は厳しいのだ。

「互いに、合格しているといいな」

「エイルの合格は、決まっているものさ」

「今回は、難しかったよ」

「それ、本当か?」

「嘘じゃないよ」

「エイルが、そのように言うのなら……」

 意外な内容に、固まってしまう。エイルが難しいとなると、かなりレベルが高いテストであった証拠だ。

 それを証明するかのようにテストを受けている最中、殆どの生徒が頭を抱えていた。

 エイルは頭を抱えることはなかったが、何回もペンが止まったという。

 だが全部の問題には解答することができ、合格に必要な最低ラインの点数は取れていると自信を持っている。

「テストの最中だけ、頭を交換したいよ」

「そんなことをしたら、僕が困るって」

「一回くらい留年を体験してみると、いい経験になると思うけどね。何事も、経験は大切だ」

「断る」

 父親の後を継ぐと決めた以上、留年など許されなかった。

 高い成績を修めメルダースを卒業し、国へ帰る。

 そして王室親衛隊の一員になる為に、入隊試験を受けなければならない。

 当初は一族の為――そう思っていたエイルであったが、今は違う。

 自分の意思で、親衛隊になろうと考えている。

 その大きな原因は、国の大きな変化。

 自分一人の力では何もできないが、動かないよりはいい。

 それにリデルという、心強い味方も存在する。そして現王室親衛隊隊長も、エイルは知っていた。