左右の瞳の色が違うということだけで、優れた身体能力を持っているわけではない。
だからこそ突然変異は、ある意味で正しい意見。
この世界の住人は、全て己が持つ属性が瞳の色として現れる。
炎なら赤、水なら青というように、一目で相手の属性を知ることができる。
無論、ラルフはそのことを知らないとおかしい。
地理の授業で、そのことを学んでいるからだ。
ラルフはそのことを完全に忘れていた。
現に、エイルのオッドアイが怖いと思っている節がある。
前後左右、様々な角度からエイルの顔を観察する。
余程オッドアイが珍しいのか、時折「ほえー」という間の抜けた声を発し、勝手に納得していた。
その怪しい行動に、エイルの背中に冷たいものが流れ落ちた。
「な、何だよ」
「エイルって、やっぱり女顔だね」
「何度も言うな」
その瞬間、ラルフの腹に拳が入れられた。
禁句とわかっていながら、その言葉を敢て口にする根性の持ち主。
流石のエイルも呆れてしまい、問答無用の攻撃を繰り出す。
学習能力の乏しさ――それがラルフの致命的な部分であったが、それが改善されることはいまだにない。
「……冗談だよ」
「それでも、許さない。こうなったら、フランソワーに八つ当たりをしてやる。飼い主の責任だからな」
「そ、それは……」
「いいだろう」
「いやー、今は……」
痛む腹を押さえつつ、フランソワーにだけは手を出さないでほしいと懇願する。
しかしあのような危険生物を、無傷で捕まえることは難しい。
最悪の場合、気絶をさせ捕獲すればいいだろう。
そう提案するエイルであったが、間髪いれずにラルフは否定の言葉を発する。
「フランソワーちゃんは――」
「フランソワーは?」
「フランソワーちゃんは、妊娠しているんだ!」
「はい?」
「本当だぞ」
爆弾発言とも取れる内容に、エイルは間の抜けた声を発してしまう。
そして上手く聞き取れなかったとばかりに、何と言ったのか再度聞きなおす。
だが、返ってきた言葉は同じであった。
フランソワーが妊娠……エイルは、笑うしかない。
そして同時に、恐怖を覚えた。


