「でも、現役じゃないよ」
「ああ、元だったな」
「腰が痛いから、引退した」
「いいのか、そんな理由で」
王室親衛隊の一般的なイメージは、強くてかっこいい。
そして凛々しく、逞しいという感じだろう。
その為、メルダースの生徒の中にもこの職種に憧れる者も多いが、簡単になれるわけではない。
それを腰が痛いという理由で引退とは、聊か理解しがたい内容であった。
「いいと思うよ。普通に辞めたみたいだし」
「只者ではないと思っていたが、凄い家なんだな。てっきり、俺達と同じような家だと思っていた」
「多分、普通」
しかし、エイルの家は普通ではなかった。
それは本人が自覚していないだけで、父親を含めて周囲は気にしていた。
エイルの一族は、代々王室親衛隊を輩出してきた家系なので、幼い頃から英才教育が行われる。
メルダースへの入学は表向きでは自主的とされているが、本当の意味では決められた人生を歩む為の勉強だ。
当初このことに関してエイルは「嫌だ」という感情を抱いていた。
それは自分の思い通りの職種につきたいと考えていたからだが、その我儘が通じない事件が起こった。
それは、国の衰退。
自分が何かできる立場ではないが、我儘を言っている余裕がないということは理解できた。
だからこそ、メルダースを卒業し父親と同じ道を目指す。
いや、目指さないといけない。
「ラルフには、内緒にしてほしい」
「了解。知られたら、煩いよな」
「前、僕の故郷に来たいと言っていた。本当に、いい迷惑なんだよ。何で、来たいと言うんだ」
「それ、嫌だな」
ラルフがエイルの家系のことを知ったら、絶対についてくるだろう。
何よりも彼は、研究費を欲している。
故に金を持っているとわかった瞬間、二度と離れることがない。
あのような存在に付きまとわれるようになったら人生が終わるというより、悪夢を見る毎日だろう。
それに、ラルフの為に実家の金を使いたいとは思わない。
どうせ研究といっても、碌でもない研究を行う。
そして多くの人に迷惑を掛けるということは、目に見えていた。
そのようなことに手を貸すのは、エイルは御免であった。
下手をすれば、共犯と見られてしまう。


