「あのようには、なりたくないな」
「ラルフより汚い」
「掃除や洗濯をする時間もなくなるとは……」
卒業試験を間近に控えた生徒の姿に、思わず声が震えてしまう。
そして、再認識する。
自分達が学ぶ学園のレベルの高さを――だからこそ、卒業するだけの価値はある。
いや、何が何でもしなければいけない。
「そういえば、就職活動をしているらしいな」
「誰からそれを?」
「噂で聞いた。流石エイルだ」
「嫌味に聞こえるのは、気の所為かな?」
「そんなことはないって。ただ、自信があるから驚いているんだ」
普通、就職活動は卒業が決まってから行うのが一般的。
中にはそれ以前から行う生徒も存在するがそれはごく僅かなのでエイルの行動は目立ってしまうが、彼のプライドがそうさせている。
「就職先は決まっているよ」
「おお!」
「驚くことはないよ。親の後を継ぐ――そういうことだから」
「ああ、なるほど」
そのことを聞き、相手は納得した表情を見せる。
実家の後を継ぐとなれば、進級や卒業に関して何ら問題もない。
まさか、本気で卒業する前に就職先を確保しようとしていたら――正直に言って、とんでもない人物だ。
エイルほどの実力者なら、それを行っていてもおかしくはない。
今まで留年なしで進級してきたという実績だけで、どのような場所でも雇ってくれる。
それだけメルダースの名は強力だ。
「お前の親父さん、何をやっているんだ?」
「元王室親衛隊の隊長」
エイルが語った職種に、相手は言葉を失う。
イメージとして、普通の魔導師を想像していた。
しかし、言われた職種は王室親衛隊。
あまりにもイメージとかけ離れており、受け入れるのに時間が掛かった。
「う、嘘だろ?」
「親の職業を偽る理由なんて、ないだろ?」
「まあ、そうだな」
だが、やはり簡単に信じることはできなかった。
王室親衛隊など、簡単になれる職種ではない。
ましてや隊長となれば――思わず眩暈がしてくる内容である。
一方、エイルは至って冷静だった。
寧ろ「何か悪いことを言ったのか」という雰囲気を見せ、首を傾げて見せる。


