「ああ、合格していますように」
「大丈夫だよ」
「エイルは、気楽でいいよな」
「気楽じゃないよ。勉強は、大変だったから」
「うんうん。図書室で、一夜を明かしたからな」
「それ、全員がやっているよ」
「一部は、いい加減だけどな」
全員があの時の苦労を思い出したのか、腕を組むと大きく頷く。
そして薄っすらと涙を浮かべた姿は、勉強の苦しさを窺い知るものであった。
そして疲れが残っているのか、目の下には隈が残っている。
「合格していたら、遊ぶぞ」
「短い間だけどね」
「それを言わない」
「本当のことじゃないか」
進級試験が終わった後、メルダースは違う意味で忙しくなる。
それは進級試験とは別に卒業試験が行なわれるのだ。
これこそ、最強にして最悪の試験。
これを合格し卒業証書を貰えれば、就職先は選び放題。
しかし世の中は、甘くはできてはいない。
入学の時も大変なら、卒業するのも大変なのがメルダース。
今まで行ってきた進級試験とは比べ物にならないほど難解な問題に、生徒達は悲鳴を上げてしまう。
結果、大量の不合格者が続出する。
そして一握りの合格者が見事に卒業し、メルダースを巣立っていく。
メルダースの卒業試験を一回で合格するなど、考えてはいけない。
また、無理をしてはいけない。
その言葉が残されたのは、いつの時代からか。
それは今も昔も変わらず、大半の生徒は留年覚悟で試験に臨む。
つまり、最初から落ちる気でいるのだ。
何とも情けないことであるが、そのように思わなければ卒業試験に挑めない。
それだけメルダースを卒業するのは、並大抵の努力では済まない。
勿論、他人事ではない。
見事に進級試験に合格し最終学年になったとしたら、本格的に卒業のことを考えないといけない。
進級と同時に卒業のことを考えるのは早いと思われるが、卒業試験はそこまでしないと合格できず、この時期屍となった生徒が学園内をふらつく。
それは連日の徹夜で、精根尽き果てた生徒であった。
特に四年の生徒がそれらの姿に未来の自分を重ね合わせ、身体を小刻みに震わす。
上手く進級できれば、その次はこれが待っているからだ。
精根尽き果て全てを絞り取られた生徒は、最終的には口から魂が抜けるという。


