同じ経験をしたいわば同士のような存在に、エイルは攻撃を仕掛けることはしない。
寧ろ攻撃を行うのなら、問題の原因を作ったラルフだろう。
そのラルフといえば、今寮で休んでいる。
「朝はお疲れ」
「いい迷惑だよ」
「ハリス爺さんの声が、まだ耳に残っている」
「でも、静かでいいよ。ラルフの声が聞こえないし。それにしても、大事になってしまったね」
ハリスから受けた肉体と精神の両方のダメージは凄まじく、あの「珍獣ラルフ」が、寝込んでいる。
これは噂好きの生徒にとっては大スクープだが、騒ぐ生徒は誰一人としていない。
本当のところは騒ぎたい気持ちがあるが、いかんせん相手はハリス。
下手に大騒ぎを受けたら、何を言われるか。
そのことを誰もが恐れるので、ラルフの噂は話されることはなかった。
だがラルフにしてみたら、それが良かったのだろう。
噂というものは広がる規模によって、いらぬモノまでお土産でついてくる。
結果、最初と最後の内容が食い違うのはざらではない。
「そういえば、そろそろ進級結果が発表されるな」
「できは?」
「まあ、普通だな。問題は、実技試験」
「あのぐらいなら、平気じゃないか」
一週間前に、進級試験が行われた。
内容は一般知識を問うテストと実技試験。
その両方には決められた点数があり、それ以上の成績を取らなければ進級できない。
無論、両方合格して進級できる。
試験の範囲は膨大で、普通に授業を聞いていただけでは解けない問題も多い。
全ては学んだ知識の応用であり、魔法に関しては実戦に近い。
進級試験が行われる三週間前になると、生徒達は殆んど睡眠を取らなくなる。
それは睡眠時間を削ってまで勉強をし、何が何でも合格しようと努力する。
その為、試験終了と同時に倒れる生徒も多い。
それを配慮してか、学園側は試験後の二日間は休みにしている。
その間、学園は死んだように静まり返る。
皆、深い眠りについているからだ。
それは、教師側にも利点があった。
生徒達が寝ている間に、静かにテストの採点を行えるからだ。
合否を決め、生徒達に通知する。
その方法は、至ってシンプルなもの。
それは採点されたテストと共に、合格通知が渡されるのだ。
その通知がなかった時点で不合格が決定で、また来年も同じ学年で頑張るしかない。
しかし、誰もそのことを批評する生徒は存在しない。


