「御主か、このような姿にしたのは」
「育てている間は、このような姿をなさっておられなかったですが……これは、間違いございません」
相手がハリスということがあってか、珍しくラルフは敬語を使っていた。
しかし普段使い慣れていない言葉、言い回しがおかしな時があった。
普通ならおかしいと指摘されるだろうが、ハリスは聞き取れればいいと考えていた。
その為、言葉に関して深く追求はしない。
その反面、植物に関しては煩いほどの質問をしてきた。
目が血走っているハリスは、恐ろしいものが感じられる。
剪定用のハサミをカチカチと鳴らしつつラルフの頬に近づけると、脅しを掛けた。
「なら、何故このようになったのだ?」
「ご存知ではありません」
「しかしこのような怪しい研究は、御主の得意分野と聞く。間違いないだろうな? 嘘はいかん」
急な質問の投げかけに、全員が反射的に首を縦に振る。
それを見たハリスはラルフの耳元でカシャンと大きな音とたてハサミをかち合わせると、更にラルフの精神力を奪っていく。
「どうして、このような姿にした」
これだけ脅されたら、普通の生徒なら土下座して謝るだろう。
流石、人間離れしたラルフ。
何を思ったのか、ハリスに反撃を試みたのだ。
それも素手ではなく、言葉の攻撃だった。
「突然変異は、品種改良です」
その発言に、周囲が固まる。
確かに植物の歴史は品種改良の歴史でもあったりするが、ラルフのようなおかしな品種改良は行っていない。
主に改良される理由としては、寒暖の激しい地域でも育つことができる。
または、改良者の趣味に関わる。
しかしそれは花の大きさや形を変えたり、背丈を変化させたりするものだ。
ラルフのように山百合の原型が崩れるほどの改良は、行ったりはしない。
「これを品種改良というのか?」
「思うなーって」
「ノリがいい奴だ」
「専攻が専攻ですから」
何が面白いのか、ラルフとハリスは互いに笑い合う。
不気味すぎる――それはまるで、嵐の前の静けさ。
その笑い声に、周囲の音が消えた。
どうやら生き物達は、これからの出来事を察したのだろう。
エイルを含め、生徒達が唾を飲み込む。
そして、これからの出来事を凝視した。


