手足を動かし、ラルフ懸命に暴れる。
だが、一人と複数。
はじめから、勝ち目などなかった。
寝巻きのまま連れて行かれるラルフ。
エイルは静かに部屋の扉を閉めると、含み笑いをしながら後に続いた。
おかしな色に変色したマルガリータが視界に入った瞬間、ラルフが駆け足で近付く。
流石人間を超越した存在、どのような体勢であっても身体能力は素晴らしいものがあった。
ラルフを担いでいた生徒達は、何が起こったのかわからないでいた。
いきなり、ラルフが視界から消えた。
「マ、マルガリータ!」
大声を発しながら、マルガリータに抱きついていた。
その怪しすぎる光景に、エイルを含め全員が引く。
中には顔が真っ青になり吐き気を催す生徒がいるのど、不可思議な光景だった。
「ラ、ラルフ……」
「エイル! 復活したよ」
「それ、話したって」
「そうだっけ?」
数分前の会話を忘れてしまうとは、やはり何処かに問題があるのだろう。
エイルは年明け前の冬、このような出来事があったことを思い出す。
しかしあれは冗談だと本人は言ったが、残念ながら的中です。
それにこのような修羅場に近い状況で、嘘を言えるほど根性があるとは思えない。
ラルフの身に確実に何かが起こっていることは確かであるが、深く追求するということは行わないのが暗黙の決まりごと。
それは「このような人物に付き合っても、疲れるだけ」という理由がある。
今回はハリスの命令であり、ラルフを逃がすわけにはいかない。
無理矢理連れてきた手前、素直に聞くとは思えない。
だからこそ慎重に見張り、逃げる素振りを見せたら叩いて大人しくさせる。
本当のところは関わりたくないというのが本音だが、あの人知を超えた植物をあのままにしておくわけにはいかない。
それにハリスの説教を生で見るのは、とても楽しいことであった。
「僕は言ったよ」
「うーん、まあいいか」
その一言で納得したラルフは、優しくマルガリータを撫ではじめた。
復活したことが余程嬉しかったのか、まるで自分の子供を撫でているようにも見えなかった。
すると、今まで沈黙を保ち続けていたハリスが徐に口を開く。
無論、発せられた第一声は怒鳴り声である。


