「な、何だこいつ」
「ラルフは、こんな人間だよ」
「人間じゃないだろ」
怪しい動きを見せるラルフに対し、冷たい言葉が投げ掛けられる。
この言葉こそ、ラルフが周囲からどのように見られているのか明確にするもので、決して優しい言葉がかけられることはない。
ただ向けられる視線は哀れみが含まれ、どのような教育を受けてきたのか疑問になる。
しかし、その答えを知りたい生徒はいない。
そのようなことに興味を持っても、特になることがないからだ。
それに知りたい場合ラルフと友達にならないといけないが、流石それは御免蒙る。
「起きろ! そして、行け」
「無理じゃないかな」
「人間離れした動きをしているし」
「なら、こうするか」
エイルは徐に利き腕を振り上げると、力任せにラルフの頬を叩いた。
部屋の中に、乾いた音が響く。唐突な行動にエイルの後ろにいた生徒達は戦くも、注意はしなかった。
これもまたいつもの出来事なので、楽しんで見る生徒も多かった。
その証拠に、全員が笑っている。
続いて、逆の方向から叩く。
すると二回目の攻撃で目覚めたのか、身体の震えが止まった。
だが震えが止まっただけで、何も言ってこない。
「行くか行かないか」その答えを聞きたいエイルは、今度は額を叩いた。
「エ、エイル……」
両頬と額を赤く染めるラルフは、シクシクと泣きはじめる。
今までの攻撃が効いたらしく、涙で濡れる瞳でエイルを見つめていた。
その気持ち悪い姿に、誰もが苦笑いを浮かべている。
「行くよ」
「嫌だ!」
「嫌だと言っても、連れて行くよ」
「ハリス爺さん怖い」
「行かない方が、もっと怖いぞ」
「そ、それは……」
「今日で、人生終わりだよ」
その台詞に全員が頷き一斉に動くと、ラルフの身体を担ぐ。
どうやら、最終手段を取るしかないと判断したようだ。
どのように説得しても、行く素振りを見せない。
それなら、無理矢理連れて行くのが一番の方法だ。
それに、この方法を用いた方が後々面倒にならない。


