「真面目だからな。黙っていてほしいと言って、黙っているような奴じゃないし。それくらいわかっているって」
「なら、頼むな」
「そんなに怒ると、可愛い顔が台無しだぞ……はっ!」
「お、お前……」
「ひ、ひえ!!」
その瞬間、ラルフは殺気のようなものを感じ取る。それは、鋭い目線が向けていたのだ。
エイルにとって「可愛い」は、一種の禁句。
間違って言ってしまった場合、素直に謝るしかない。しかし、エイルは容赦しない。
特に相手がラルフの場合、問答無用の攻撃が待っている。
「悪い。つい言ってしまった」
「ついとは、思えないけど」
「いや、本当だって」
「フランソワーは、自分で見つけなよ。僕は、手伝わないから。そもそも、お前が飼っている生き物だ」
「そんなことを言っても、逃がさないからね。フランソワーちゃんは、寂しがっているんだ」
「なら、お前が捜しに行けばいい」
「いやー、一人じゃ寂しいし」
片目を閉じお茶目な一面を見せるとエイルの服を掴み、そのまま廊下の隅に連れて行く。
ラルフ曰く「この場所が、フランソワーの最終目撃現場」らしい。
だが、エイルは全く興味を示さない。
寧ろ「それがどうした」という雰囲気を全身から漂わせ、欠伸を繰り返していた。
「フランソワーちゃんは鈍足だから、この周辺にいると思う。これ、俺の長年の勘。愛する者の存在は、手に取るようにわかると自負していたけど……でも、どうしても見つからない」
「で、何?」
「捜してほしいな」
その言葉が言い終えると同時に、エイルの瞳が怪しい光を放った。緑と紫のオッドアイ。
その独特の雰囲気に、ラルフは思わず息を呑んでしまう。
それは美しいという感情ではなく、恐ろしい一面を見たからだ。
氷のように冷たく刃物のように鋭い視線は、相当の殺傷能力を持つ。
オッドアイ――それは、エイルが生まれ育った地方で稀に見ることができる、現象であった。
一説によれば「神に祝福され、生れてきた子供」と思われているようだが、定かではない。
とある人物の言葉を借りれば「突然変異」らしいが、この場合後者の意見の方が正しい。


