「ど、どうする?」
「答えは、決まっているよ」
「だよな」
「僕は、安全な方を選ぶよ」
「まあ、それは全員が同じ考えだよ」
その時エイル達の話が聞こえたのか、ハリスが振り向く。
手に持った剪定用のハサミをちらつかせ、何を話していたのか尋ねる。
全身から放たれる威圧のオーラ。
それを見た瞬間、全員が服従をする。
「ラルフ・ジブレットが悪いのです」
服従をしたからには犯人を売り渡し、自分達の身の安全を図る。
このことをラルフが知ったら間違いなく反論をするだろうが、誰もハリスに逆らおうとは思わない。
やはり、我が身が可愛い。
一斉に発せられた名前に、ハリスの表情が変わった。
そして内に秘めた怒りを今にも爆発させそうな、危険な状態となる。
それを見たエイル達は、一歩一歩と後ろに下がっていく。
しかし、ハリスの言葉がそれを止める。
それは全身を突き刺すような痛々しいものであり、ハリスの存在を絶対的な存在へと変化させていった。
すると、無言のままでいたハリスが徐に口を開く。
それは、ラルフを連れて来いという命令であった。
この瞬間、ラルフの運命は決まった。
「わ、わかりました」
震える声音で、命令を受け入れる。
年明け早々このような命令をされるとは思わなかったエイル達であったが、相手が悪かった。
もし拒絶でもしたら、後で何をされるかわからない。
急いでラルフの寝室に向かうと、力任せに扉を開く。
そしてドスドスという足音をたてながら寝台の横に向かうと、思いっきり掛け布団を剥ぐ。
突然の行動、ラルフは状況を掴めないでいた。
エイルはラルフの胸元を掴むと、グイっと顔を引き寄せる。
そして、マルガリータの復活を告げた。
最初、何を言っているのかわからないでいた。
だが時間が経過するにつれ状況が掴めたらしく、ポンっと手を叩くと大声を発した。
それは、マルガリータの復活を喜ぶ奇声である。
「喜ぶな!」
「のおおお! い、痛い!」
ラルフの反応が気に入らないエイルは、身体を思いっきり振る。
その反動で首がおかしな揺れ方をするが、気にする様子はない。
寧ろ「何故、復活をした」という理由を知りたかった。
このことはエイルと共に来た生徒も同じであったので、誰も彼を助けようとはしない。


