「それじゃあ、乾杯」
その声に合わせ、グラスを軽くぶつける。
チン。
澄んだ音色が余韻を残しながら、静かな空間に響く。
ふと視線を窓に向ければ止んでいたと思っていた雪が再び降り出し、辺りを更に白く染め上げていく。
また風も出てきたのか、粉雪が窓に張り付いていた。
パーティー会場は、まだ盛り上がっているだろう。
年越しで開かれるパーティーは、必ず朝方まで盛り上がる。
そしてそのまま会場で寝てしまい、起きた時には風邪をひいている。
エイルはそのような不摂生なことは行わないが、クラスメイトの大半が翌日から寝込む。
これも一種の年中行事でもあり、これに関して注意をする教師はいない。
それは教師の中にも、同等のことを行う人物がいるからだ。
「進級試験、受かりそうか?」
「年越しの日に、そんな話はしないでほしいな」
「お前って、いつもギリギリだよな。それに、就職をどうするか。まあ、その前にやることがあるか」
進級試験に合格すれば、メルダースでの生活は残り一年。
卒業試験を落ちればもう一年過ごすことができるが、エイルはそのようなことは考えていない。
一年を過ごし卒業。
そして――
「エイルの故郷って……」
「まだ言うか」
「エイルの故郷って行ったことないから、興味があるんだよ。それに、暖かい室内なら仕事はできるぞ」
ラルフはグラスに注がれた果実酒を一気に飲み干すと、歯を見せながら満面の笑みを浮かべる。
どうやら細かな理由はなく、ただ「行きたい」という単純な意味合いからクローディアを訪れたいようだ。
「暖炉に火を入れても、寒い時は寒い」
「やっぱり、寒いんだ」
「授業で、地理を勉強しているだろ」
「そ、そうだけど」
「実験以外は、どうでもいいんだ」
「そんなことはないよ」
一体、授業中に何を聞いているというのか。
メルダースがある地方を含め、その土地の気候や風土などは授業で学ぶことができる。
いやその前に、常識として知っていて当たり前のことだ。
クローディアの寒さは特に有名で、冬の時期の来訪は特に気を付けないといけない。


