ロスト・クロニクル~前編~


「お前の洗濯物と一緒になっていたやつだ、そのまま使えるか」

「うわ! 俺は綺麗だぞ」

「まともに洗濯をしない奴が、何を言う」

 ここ数週間、ラルフは「寒い」という理由で、洗濯を行っていない。

 先程の箱の中に詰められた汚れ物も、それが関係していた。

 寒いというのなら、洗濯を専門に行っている店に頼めばいい。

 しかし金欠なので節約を行っているというが、洗濯と節約は別問題。

 汚い物を大量に仕舞い込むのは、衛生上悪い。

 もし季節が冬ではなく夏であったら、間違いなく悪臭を放っていた。

 それこそ周囲に迷惑をかけ、問題となっていただろう。

 あまりの無頓着っぷりに、エイルは説教をはじめた。

「今度、洗濯をするよ」

「その時、僕も一緒にするから」

「いや、それは……」

「いいよな?」

 流石にそのように言われたら、返す言葉が見つからない。

 ラルフは適当にはぐらかし、逃れようとしていた。

 だが、エイルはそれを予想し逃げられないようにする。

 どちらにせよ、洗濯をしないわけにはいかない。

「エイルって、俺に厳しい」

「そんなことはないよ。皆、普通にやっていることだから。お前が無頓着なだけ。よし、綺麗になった」

 拭き終えたグラスをランプの明かりに透かし、汚れが残っていないかどうかチェックしていく。

 エイル曰く「汚れが残っていたら、腹を壊す」ということらしいが、本当はラルフの汚れを体内に入れたくない。

「よし、酒盛り開始」

「度数は、高くないよな」

 年齢が若いのに酒盛り……と思われるが、エイルやラルフの故郷で酒が飲める年齢は15歳。

 だが中にはもっと若いうちから飲む者もいるらしく、決まっているようで決まっていない状態だ。

 用は自己責任であり、その後どのようなことが起ころうと文句は言えない。

 エイルとラルフは、酒の強さに関しては普通。

 ザルとまではいかないが、それなりの量は飲めるので、酒瓶一本程度なら簡単に飲みきってしまう。

 慣れた手付きでコルクを抜くと、エイルが持つグラスに注ぐ。

 それは、透明な液体。

 果実酒といっていたが、無色透明に近い色であった。

 それでもほのかに漂う甘い香りが、果物から作られた酒だと教える。

 そして酒が弱い人物であったら、これだけで酔ってしまうだろう。